文化・芸術

幼い頃読んだ古典児童文学の鮮烈な印象

最近、古典文学の新訳が流行っている。 J.R.Kipling(キプリング)のThe Jungle Book(ジャングル・ブック)が“All the Mougri Stories”(ニンゲンの子マウグリの物語り)のタイトルで新訳された。 ボクが10才のころ小学校の図書室で借りて読んだ海外の古典小説の…

一流の師との出会い・・

50年代初めに、芸能月刊誌に『平凡』を追いかける?形で集英社が『明星』を創刊した。第1号の表紙を飾ったのが美空ひばり、70年代『平凡』に劣らぬ人気雑誌として売れ行きが伸び、同社のドル箱雑誌となった。が、今では『明星』が『Myojo』に変わり、存続し…

“追憶”とはかくの如きもの

芥川龍之介が自死する“最晩年”(1926年〜1927年)に45編の≪追憶≫を記している。当時の文藝春秋に連載され、没後『侏儒の言葉』に所収された。 “追憶”も英語で言えばrecollection:reminiscence。“思い出”とほとんど同義に扱うしかないが、日本語の意は≪過ぎ去っ…

幸せな≪終焉≫は“かちどき”・・

昨日特記した異色の文庫本「講談社文芸文庫」だが、いま手許に幸田文『ちぎれ雲』がある。著書目録つきで200頁足らずで940円。やはり格別の高値だとはいえ、所収の父露伴の最期をみとった小文≪終焉≫は出色している。 「7月11日朝、祖父の部屋へ掃除に行った…

また文庫本が新創刊--多種化と値段差にビックリ

静山社というボクにとってあまり聞きなれない版元がある。売りに売れている『ハリー・ポッター』の出版で名をはせた社らしいが、あらたな収益の柱をつくるべく、このほど「静山社文庫」を創刊。年間60点を刊行、合計100万部の売り上げを目ざすという。大変威…

“鉄幹なしに晶子なし”という

「与謝野源氏」を少しずつ読んでいる。 『与謝野晶子全訳:源氏物語』の編者が述べている。 「難解な源氏物語をきわめて理解されやすい現代的な表現に変えた『与謝野源氏』の特色は、何よりもまず女性の心をもって女性の心を見いてることである。女性でなけれ…

懐旧と追憶(その2)

急ぎ足で逝ってしまった知友、忽然として早世した教え子がいる。思い出は、懐旧というより追憶というべきだ。寂寞として無念だ。 追憶といえば、恒藤恭の“友人芥川の追憶”をあらためて読みしんみりさせられる。 「数えて見ると、芥川との交はりは十八年の過…

懐旧と旧友なるもの(その1)

ボクの大学時代の恩師Y先生だが鬼籍に入られてもう20年余になる。 眼差は優しかったが、学問の姿勢については厳格だった。正鵠と創造・想像を旨とされ、安易な模倣は許されなかった。明治生まれの気骨があり風雅で偉大な英文学者であり詩人でもあった。大卒…

清張、蘇る・・・・?

松本清張の生誕100年を記念して?「週刊 松本清張」が明後日刊行されるらしい。毎週火曜日発売だが、全13号で終刊。氏の作品を毎号一作取り上げ、取材メモや関係者の証言などから作品の世界を多角的に紹介。創刊号は名作『点と線』を取り上げるという。70年…

芥川の“後世”のささやかな夢

1927年(昭和2年)7月24日、芥川龍之介は35歳で自死した。その3年前の1924年「澄江堂雑記」を刊行、その中で自らの≪後世≫なるものを次のように描いている。 『時時私は廿年の後、或いは五十年の後、或いは更に百年の後、私の存在さへ知らない時代が来ると云ふ…

戦中・戦後(敗戦直後)の作家の日記にエスプリあり

Donald Keene氏の「日本人の戦争」(講談社)が角地幸男氏訳で出され、戦時中と敗戦直後の“作家の日記”のエスプリを味わった。苦難の時代の日記だ。味読゜ではなく苦読が多かった。 山田風太郎「戦中派不戦日記」、伊藤整「太平洋戦争日記」、「高見順日記」な…

“かくありたい”を考えさせられる

愛読書「現代人の論語」(呉智英:文芸春秋社版)を再々読する。 「論語」は超ロングセラーだが、注釈付きや現代語訳モノなど(英訳モノもある)のサワリを読んだことはあるものの、恥ずかしながら“積読”に近い。 論語の一句を引用したまではいいが、とんでもない…

調べモノは切りがないので、まず「入門書」から・・

このところ米英主要紙のNews AlertやToday's HeadlineさらにはAfternoon Updateなど濫読し、また柄にも無く日本の古典や名詩訳選などを拾い読みしている。 英語の語彙不足は今には始まったことではないので、知らない語句に出くわした場合、手持ちの大英和や…

黄昏の初秋-“流水不濁 忙人不老”?

今夕の涼しさに本物の初秋を感じ、帰路に着いた。 夕食後、昨日買った月刊誌Sをめくる。城山三郎の単行本未収録エッセイ「自作の周辺」が興味を惹く。 そのなかの『元教師の弁』が面白い。 「わたしの息子が通った学校の校長は、『日本の父』で有名になった…

秋色点描

ほぼ快晴の朝である。この八月August(夏の帝)は真昼時も傘が離せなかった。ふと気がつけば、部屋のカレンダーは八月のままになっている。九月にめくる。なぜか、晩夏を惜しむ心持は薄い。 外は初秋の色香が匂う。近くの公園の細道を病葉を踏みながら、行き交…

Lido島で Venezia Film Festival開催--メランコリーなThe Merchant of Venice

Veniceと云えば、まず一番に、Shakespeareの“喜劇”の代表作The Merchant of Venice(1956年--1957年頃書かれ、1600年に初舞台化)が頭に浮かぶ。 第一幕のScene 1はVeniceのある街中での場面から始まる。ベニスの商人Antonioと仲間のSalarino, Solanioが登場す…

終戦(敗戦)の日−64年前のあの日の言葉

64年目の8月15日を迎える。 このところ、第二次大戦、太平洋戦争の映像や帰還軍人の体験談の特集番組が目白押しだ。著名人や知識人の懐旧的・回想的な話よりも、当時一兵卒だった数少ない80代〜90代の人たちの、言葉少ない語りが最も強く刻印される。「生き…

Barack Obamaの登場を予言したSidney Poitier

President Obamaがthe Predential Medal of Freedomを16人の栄誉ある米国人に授与した。 この賞は、Medal of Freedomに象徴されている。米国民として最高の栄誉ある賞であり大統領が授与するのはObama氏が初めてである。 16名の中には病気でThe White House…

古いからって捨てるにはmottainaiモノもある

久々の雲ひとつない昼下がりである。外は暑いが湿気が少なくて割と気持ちいい。 昨日、自転車でコンビニに向かう途中、後ろのタイヤがガクンと来た。空気が抜けた途端、自転車が恐ろしく重くなり、ペダルを漕ぐのに汗をかいた。今日、後輪パンクの乗り古した…

先史時代のItalyの跡地聞きかじりと寸見

6月初めItalyへの旅で、田園地帯にそそりたつCortona(コルトーナ)という古色蒼然とした街に出かける機会を得た。旅行ガイドや並みの世界地図に載っていない。聞けばローマ帝国前に謎の先住民族がいた。エトルリア(Etruria)人という。紀元前175年〜150年代、…

I'm not naiveの適訳は?

今日は朝から、スタッフの車に同乗し野沢温泉の民宿に日帰りで出かけた。高校生約20名の「合宿勉強会」の開講式にひと言コメントするためである。5泊程度、生徒たちは英・国・数の勉強漬けになる。この種の短期研修のことを英語でcrash courseと言う? とも…

古書店で出逢った小林秀雄「感想」についての感想

昨日、土曜日午後、久々に本郷の馴染みの古書店に出向く。 客は数人いたが、たいがい手に取り買うのは古い新書本である。 ボクが購入したのは三冊。一つは『フィレンツェ−−芸術都市の誕生』。2004年と2005年東京都美術館と京都市美術館で、同名の特別展が行…

「河童忌」82回目を迎えて・・

今日7月24日は「河童忌」。1927年35歳で自死した芥川龍之介の命日、晩年の作品「河童」に因んで呼称されて早や82年になる。 芥川は自伝的作品のなかで、自身のことを必ず“僕”と呼ぶ。 彼は、『ただぼんやりした人生への不安』から晩年、自死を考え、その方法…

智謀・勇猛の兼続、「・でござります」の心底にcan-do spiritを秘めていたはず

長年、藤沢周平の時代モノを愛読してきたが、初期に一挙に読み終えた作品の一つが「密謀」だ。主人公はいまNHKの大河ドラマ『天地人』の主人公直江兼続。主君上杉景勝を支える智将・勇将である。 周平さんの「密謀」に見られるとおり、『天地人』でも智謀の…

「知ったこと」より「感じたこと」

「加藤周一 戦後を語る」のなかの冒頭部≪ある晴れた日の出来事 12月8日と8月15日≫で“1941年12月8日−その日、私は・・“と題して語っている。 「1941年の12月8日、私は学生でした。東京帝国大学医学部の学生でした。この日は晴れた日だった。・・・・朝、新聞…

「語りおくこといくつか」は脇において−若者へのメッセージに耳を傾ける

加藤周一『語りおくこといくつか』(かもがわ出版)が二冊送られてきた。Amazonで注文したものだが、代金払いとクレジット払いの二重注文をしてしまったようだ。同氏の講演集で内容は豊富だ。一冊はいずれかの機会に知友に差し上げればいい。 手元に『加藤周…

海外で“眼の福”と“口の果報”にあずっかたが・・

今や名実とも世界のleading voiceとなったPresident Obamaにとって今回のItalyでのG8は初めてだが、開催地が大震災の傷跡の癒えないL'Aquilaが選ばれたのは驚きだ。出席した首脳にとっては景観を観賞して“眼の福”にあずかるどころではなかったはずだ。 今な…

自分のことを、“僕(ボク)“と呼ぶ人々の語りはいい。

折に触れボク自身、喝采を送っている80歳をはるかに超えた名優がいる。森光子さんと三国連太郎さんだ。 『釣りバカ・・』を撮り終えた三国さんが今夜のTVで語っていた。もう86歳の老優だ。否、森光子さんにもいえるだろうが、老優などと呼ぶと叱られそうだ。…

試作は労働−実体のある言葉は実生活のなかで五感を通じて生まれる

最近、ちょっとした原稿を依頼されることが増えつつある。言葉を紡ぎだすのは、ボクにとって産みの苦しみだ。つとめて、実体のわからない観念語は使わないように戒めている。 そんな折、詩人新川和江さんへのインタビュー記事に触発された。新川さんは15歳で…

打率4割の至近距離にいる最後のMLB All Stars Playerは静かで優雅な芝刈りスラッガー

我がMLBのファン球団は30数年来Minnesota Twins一筋だ。旧Washington SenetorsのこのティームはTokyo Domeの見本となった球場Metrodomeに移転した当時は万年弱小球団だったが、その後World Series Championsにもなって名をはせた。が、トリー・ハンターやサ…