調べモノは切りがないので、まず「入門書」から・・

このところ米英主要紙のNews AlertやToday's HeadlineさらにはAfternoon Updateなど濫読し、また柄にも無く日本の古典や名詩訳選などを拾い読みしている。
英語の語彙不足は今には始まったことではないので、知らない語句に出くわした場合、手持ちの大英和やWebster Int. Dictionary、さらにはOxfordやGoogle辞書をネット検索するなど、まさに総動員体制でとことん調べる。時によっては、1つのwordやphraseの適訳にたどりつくのに一時間以上かかることさえある。意味不明のまま読み進むことが苦手だ。

たとえば、何度も引用するObama Prague Speech On Nuclear Weaponsのなかの“I'm not naive”。naiveなる語が曲者だ。ボクたち日本人が普段、誰それは“ナイーブだ”などと安易に使っているから始末が悪い。この場合日本人の頭にあるnaiveの意味はたいがい“sensitive”(感受性が強い)てなところだろう。ここに落とし穴があった。President Obamaの使ったnaiveは“世間知らず”“うぶ”“考えが甘い”という意味だ。こうした原語の真意にゆきつくまでに大変苦労した。
でも、ボクにとっては“I'm not naive”という表現に遭遇できて有難い。相手は人間じゃないがまさに“邂逅”である。

さて、この“邂逅”という言葉、「偶然の出逢い」だという意味は解っているが、先日も謎として残ししておいたのはこの“邂逅”に上田敏先生が『海潮音』のなかで≪わくらば≫とルビをふっておられる点だ。≪わくらば≫とくれば『病葉』が相場だと思っているボクにとってはオドロキ、モモの木、山椒の木だ。
広辞苑を調べたら『わくらばに』=(副詞)邂逅に=たまたま、たまさかに、とある。“邂逅”じゃなくて“邂逅に”となって意味を成すのである。日本語の勉強不足が露呈した。
“邂逅に”の元祖?が「万葉集」にみられる。

    • 松浦河に遊びて贈り答ふる歌八首、また序---

・・・今邂逅(わくらば)に貴客(うまひと)に相遇(あ)ひ、感応に勝へず、轍ち款曲を陳ぶ。・・・
この意味を現代語に直すとなるとまた相当な時間をかけなきゃなるまい。本日はそこまで調べモノを続ける根気はない。

昨春、現役の仕事を定年でリタイアー。知友の薦めもあり、意を決して「源氏物語」の名訳、いわゆる『与謝野源氏』を読み始めたが、目下中断。次から次と顔を出す人物や風景、宮中語に悪戦苦闘。因って『源氏物語の時代』(朝日新聞社)をままず紐解いて、今日、『源氏物語入門』(角川選書)を近くの書店で買ってきた。

ワケもわからず無理して本体に手を出す前に、まず『入門』することだろう。