War On Terrorに出口は無い

9/11から8年を経た。決然と“War On Terror”(テロとの戦争)を宣言し、その日を「愛国の日」としたGeorge Bush氏。アフガンへの猛爆、タリバンを制し、イラクを泥沼化し、国民の信を失い退場した後に颯爽と登場したBarack Obama氏、9.11追悼記念日、初の大統領としてのスピーチに注目した。
「この日の真の精神を確認したい。それは破壊と欲望ではなく、守り、奉仕し、築き上げる力だ」と国民に呼びかけ、9.11を『奉仕と追悼(祈り)の日』と定めた。

そのうえで、Obama氏は「(国際テロ組織)アル・カーイダと過激派の追跡で、ひるむことは決してない」と述べ、アフガンでのテロ掃討を遂行する決意を改めて示した。が、アフガンの情勢は好転の兆しはない。さらなる兵力増派を計画しているPresident Obamaだが、米国民のなかに厭戦ムードが広がり、アフガンでの対タリパンへの対応に対して≪オバマの戦争≫との声が聞こえつつある。憂慮すべき状況だ。

このBarack Obamaの登場を大いに期待していた人がいる。昨年12月他界された「知の巨人」加藤周一さんだ。その加藤さんの≪未完の前書き≫がこのほど見つかったという。昨年夏ごろから書き始めたものらしく表題は『短いまえがき なぜこの三人か』。加藤さんは最期の仕事を書き終えることなく逝ってしまった。
その加藤氏が『加藤周一 戦後を語る』(かもがわ出版)のなかで≪九月十一日の未来≫と題してテロリズムについて次のように語っている。

「長期的には、テロリズムをなくすことはできないでしょうが、少なくすることはできるだろうと思います。非常に迂遠なことを言うようですが、できるだけ南北格差を狭めて、平等で公平な立場で話をもっていく状況を作るのが1番大事なことです。そうすれば確実にテロリズムは減ると思う。
 逆に言えば、ほかに手段がない。弱い側の、絶望的な最後の手段がテロリズムなのだから、弱い側を強いほうがあまり追い詰めてはいけない。ほかに出口がないような、話し合いが到底不可能なように、ほかに何もできないように追い詰めるのが、いちばん危険です。対抗手段は、話し合いの道をできるだけ開く。強弱の関係で、強いほうが弱いほうへ強制するのを弱めるようにもっていくしかない。それがどの程度できるかによって、将来のテロリズムの発生は抑えられるか増えるかということになると思います」
加藤さん自ら仰るとおり“迂遠な話”であり、金大中氏のSunshine Policyに似ている点もあるが、Terroristを出口無しの状況に追い詰める危険性は自明である。President Obamaもこの際傾聴すべき言葉ではなかろうか。