先史時代のItalyの跡地聞きかじりと寸見

6月初めItalyへの旅で、田園地帯にそそりたつCortona(コルトーナ)という古色蒼然とした街に出かける機会を得た。旅行ガイドや並みの世界地図に載っていない。聞けばローマ帝国前に謎の先住民族がいた。エトルリア(Etruria)人という。紀元前175年〜150年代、イタリアのほぼ全土を治め、エトルリア帝国が海陸とも遠くまで広がっていたといわれている。先史時代のイタリアで、エトルリアなる地域に数世紀のうちにイタリア最初の大文明が開化するようになったのはなぜか。
その要因はエトルリアの地理的位置にあるという。「エトルリアは非常に肥沃であって、おおむね平野部が広がり、いくつかの丘陵が平野を分け隔てているが、丘の斜面は耕作に適している。エトルリアは冬季だけでなく夏季も適度に湿潤である」とイタリア出身のギリシャ人ポセイド二オスが指摘している。

確かに彼の地の古代の地勢は今も変わらない。まさに丘陵地帯に存在した街の1つがこのあいだ訪れたCortonaではなかろうか。


“最近コルトーナで発見された青銅版には、大湖トラジメーノのエトルリア語の呼び名タルスミナスが記されていた“とある。

因みに、エトルリア地域とリグリア地方との境界を画する川がフィレンツェ(Firenze)を流れるアルノ川(Fiume Arno)だ。
これまでもっぱら米国を軸にアジア太平洋地域を旅したり、目を注いでいたボクにとってヨーロッパ史は無知に近い。イタリアの地歴など知識も関心もゼロに等しかったものが、昨日池袋の書店で『エトルリア人−−ローマの先住民族 起源・文明・原語』(白水社文庫クセジュ)が目に留まり、思わず買い求めた次第である。

ボクにはなぜか、旅先の海の向こうの国々や地方で地図(Atlas)を買う癖がある。我が部屋の書架に眠っていたRand McNallyのHistorical Atlas of The WorldとThe TimesのAtlas of World Historyが参考になった。

The Times-Atlas中のThe Greek world 750-300BCを見ると、Italyの中に記されている数少ない地名の1つにCortonaが載っている。通例の旅人が訪れないあのCortonaが古代イタリアのAtalasにその跡を留めている。偶然の出逢いに驚く。これを邂逅と呼ぶべきか。感慨深いものがある。