ドンピシャの日本語・妙語もあるが、言葉(英語)は難しくて怖い

一週間前、信州の豪雪地帯、飯山・野沢方面に出かけたが、さすがに残雪は見受けられなかった。千曲川の深い水嵩と濁水が目につき、今夏の気象を象徴づける。

ところでこの「残雪」だが、英語でどのように表現するか。和英辞書のほとんどは“remaining snow”、文字通り“残っている雪”。言えば妥当だが、「説明臭くて、語呂もイマイチだ。ならばleftover snowもあるが、食べ物の≪残り物≫のイメージが強すぎる。≪去りかねている雪≫と風流なlingering snowは、ちょっとヤワすぎる感じだ。それに比べて、日本語の『残雪』はドンピシャリ。その端正な二字に無駄がない。響きも引き締まって、かといってきれいすぎず、濁音のラフなざらつきも残る」とArthur Binard氏は「日々の非常口」(新潮文庫)のなかで「残雪」なる表現を好きな日本語の1つに挙げる。

ならば「残暑」はどうか。この夏は困ったものだ。早や立秋もすぎたいま、普通ならばそろそろ“残暑お見舞い・”と申し上げたいところだが、連日、激しい雨の来襲にうんざり。適切な季語が見つからない。「残暑」は英語でlingering summer heatとかThe lingering heat of summerと訳すが、この表現も説明的すぎる。そのうえ、今夏はsummer heatそのものが不安定で怪しい。

いま、西日本から東日本にかけて記録的な豪雨が予想され、大雨・洪水警報が懸念される。台風9号の影響だ。
9号より8号が猛威をふるっている。台湾では50年ぶりの最悪の豪雨と烈風、6階建てのホテルが傾き氾濫する河川にむかって倒壊する。Typhoon Morakotと命名された8号だが、中国大陸の福建省に上陸、100万人の住民に避難勧告がだされた。

ところで台湾の倒壊寸前の現場写真を配信した上の英紙TIMES ON LINEのヘッドライン“Typhoons wreack havoc across Asia”(台風、アジアに大打撃)だが、生意気申し上げて恐縮だが、このなかのwreackはスペリングミスで、正しくはwreakでは・・・?
英語のスペリングミスは怖い。いま民放TVのニュース番組は人気タレント・女優の覚醒剤使用逮捕の詳報一色だ。キャッチはいささか刺激的たが、“ヒロインがヘロインに”というところだろう。
ヒロイン(heroine)とヘロイン(heroin)。スペリングを間違って逆にしたらエライことになる。