2016-01-01から1年間の記事一覧

群れないで考える

仕事から退いて素浪人になったのを機に、名画座巡りを計画的に再開した。年間100本以上観るつもりだ。 折しも、京橋のフィルムセンターでEU FILM DAYS 2016が始まった。映画で旅するヨーロッパーEU加盟国の選りすぐりの作品を紹介する映画祭。今年で14回目に…

広島余話

平和記念公園の原爆死没者慰霊碑ー「・・・過ちは繰り返しませぬから」の意味を改めて考える。 「主語は誰なのか?日本人の自虐思想の表れだ」云々の批判が聞こえるが、核兵器使用による悲劇を二度と繰り返さないという人類の悲願と誓い。主語は世界人類であ…

道徳的革命と記憶の大切さ

President Obama の広島訪問から1週間が過ぎた。一種のパック・ツアーのように見えるが、その言葉と立ち居振る舞いに同氏のnuclear free worldへの一貫した希求の念が窺える。 平和記念公園での17分に及ぶObama Hiroshima Speech。随所に心に刻むべき言葉が…

 続ーチョビ髭

『独裁者」製作の構想は、関係者の間では厳しい箝口令が敷かれたものの、アッという間に世間の話題となった。まだ製作にも入っていない一本の映画に対して、異常な妨害キャンペーンが始まる。チャップリンが風邪をひいて撮影所に姿を現さなかったことを根拠…

チョビ髭ー笑いを武器に

1989年4月16日、ロンドンの貧民街で生まれたCharlie Chaplin、同じ年の4日後、オーストリアで生まれたAdolf Hitler。20世紀において最も愛され、最も憎まれた両人、あのチョビ髭も偶然だったようだ。映画というメデイアを統治システムの基礎のおいたナチスは…

反ナチ「市民的勇気」

『なぜ文明国ドイツにヒトラー独裁政権が誕生したのか?』(講談社現代新書「ヒトラーとナチ・ドイツ」より)と問いかけられる。『ヒトラー独裁が国民に支持された体制だったことである。これまで語られてきたドイツ国民は、ナチプロパガンダにのせられて同調…

液状化から拡散へ

今朝のNYTimes.com、二つのHeadlinesに注目-- "U.S. Attack Kills a Top ISIS Leader in Syria, Pentagon Says" -"Belgian Suicide Attacker Made Paris Bombs, Authorities Say" 11/13のTerror Attacks in Paris後、散発的に起きる欧米や中東での爆破テロ。…

5年--怖い諦念と想像力の鈍化

5年前の3/11午後、新丸ビル2階のラーメン屋で震度5強。長い大揺れに怯え、テーブルの下に身を屈める。店から逃げ出す女子店員。思わず呟いたー「大変なことになったぞ」ー 通路のDigital Signageの映像はバーチャル・リアリテイか? CatastropheとChaosに呆…

モノクロのリアリズム

内田吐夢の名画「飢餓海峡」を観た。16㎜フィルムで撮影したモノクロ映像を35㍉に伸ばし、荒涼感を出す特殊な手法を駆使、終戦直後の日本人の精神的飢餓を表現している。3時間モノの長尺、1965年の作品である。三国連太郎の陰影ある彫りの深い迫真の役創りに…

過ぎ行く如月(キサラギ)

イギリスに「雪の1月、氷の2月、風の3月」という歌がある。温帯の国に共通する特徴といえる。 初春以来、朝7時前に柴犬と散歩にでかける。2㎞余りの道のりを約40分かけて歩く。我が家の柴はペット犬ではなく、猟犬・番犬だ。雌だが、散歩中も気分を害せば飛…

痛ましい比国の老婦人

Emperor / Empressの比国訪問には感銘した。PMらの外交の比ではない。真情溢れる。 が、大戦中日本軍は同国の中に目立たぬが、深い傷痕を残している。 日本軍がフィリピンを占領した1943年、当時16歳の少女だったHilariaさんは3人の日本兵に誘拐され、殴ら…

President Obama---Lame Duck Sessionではないぞ!

いささか旧聞に属するが、President Obamaのthe final State of Union addressを読み返している。残任期間1年を切った。最後の一般教書演説である。 冒頭のマクラは"I'm going to try to make it a little shorter." (演説は短めにしよう)。議場は拍手喝采。…

パラマウント35㎜見納め?

新文芸座(池袋)に注目している。名画座の灯復活というところだ。 現在2週間連続、<銀幕に輝き続ける永遠のヒロイン-追悼 原節子>と銘打て、《河内山宗俊》(1936年)から《慕情の人》(1961年)までの18本を上映中だ。 その前、年明けから<パラマウント・クラ…

--Terrorists(テロ)の目的はTerror(恐怖)にある--

前の職場の女子職員が結婚し来月新婚旅行に出かける。「ヨーロッパは怖いからNZにした」とのこと。 11/13パリ同時テロの惨事は世界に衝撃を与えた。穏健イスラム教徒の中軸国であるマレーシアへの修学旅行を急遽取りやめた高校もあるほどだ。負の連鎖が不安…

名画座巡り--再見・再見The Untouchables 昨年秋から都内の名画座巡りを始めた。1950年代〜60年代、都内に限らず全国の街々に名画座が溢れ輝きを放っていた。正確に言えば、2番封切り、3番封切館全盛の時代だった。 10代後半から20代、足繁く通った主な映画…

『時間』(続)--戦慄すべき<記憶の危機>

著者堀田善衛は主人公の中国人知識人・陳英諦をして迫り来る日軍の対中侵略・大虐殺を予感し語らせている。「都市は欧風化し、田舎はいつまでも太古のままという、この変則的な中国文明は、いま非常なshake up,揺り返し、混沌の時期を迎えたわけだ。・・・血…

元朝の読初めは「時間」がかかる

稀に見る晴天微風の元朝。柴犬との散歩で始まる。散歩を中国では『白想』(バイシャン)と言う。美しい言葉だ。 書初めならぬ、読初めだが、中国人の視点から描く『時間』(堀田善衛)と数日来格闘している。Nanking Massacreなる最大級の悪名で世界に伝られ…