アメリカに吹く風-WASPの権威への反抗から、melting pot(人種のルツボ)・salad bowlを経て多文化主義へ

50年代後半から60年代にかけてMartin Luther King Jrが命をかけた
黒人運動・公民権運動はそれまで米国を支配してきたWASPの権威に対する反乱だった。
「King牧師の最大の遺産は、黒人も白人と同等の権利をもつ同じ人間だという意識を、広くアメリカ人の間に、いや全世界の人々に植えつけたことだろう。
今では、WASP中心の“人種のるつぼ(melting pot)”を信じる人はいなくなった。もしいたとすれば、その人はracist(人種差別主義者)として排斥されるだろう」
「1960年代以降WASPではない少数派も平等の権利を主張するようになって、salad bowlとかmosaicという考え方が有力になった」
「・・・そしてさらに、1980年代末から現在にかけて定着している考え方は、さらに一歩進めて、相互に人種・民族のもつ文化の異質性を認め合いながら、差別のない社会を作り上げよういう“muticulturalism”(多文化主義)である」

これはボクの信頼する米国史・米国文化研究の権威、猿谷要氏の初のエッセイ集『アメリカの風』の中の1998年に記した≪平等の理念と現実≫からの引用である。
今度のBarack Obamaの勝利は、奇しくも10年前の猿谷さんの指摘を見事に具現化したものだ。