謙虚さとひたむきさ、そして冷静に先を見通す眼

男子マラソンワンジル選手が圧勝した。ケニアに初の金メダルをもたらした。日本の高校に留学し、長距離選手に育ったワンジル選手がインタビューに答えた。
『日本で我慢することを教わりました』
最後尾でゴールしたのは日本の佐藤選手だった。76位。後続のランナーはいない。途中棄権しているからだ。佐藤選手も我慢の選手だ。
女子ソフトボールと男子野球はアジア勢がチャンピオンになった。二位甘んじた米国チームとキューバチームはそれぞれ日本の女子と韓国野球に対し賛辞を惜しまなかった。
日本の人気スポーツ、(男子)サッカーと野球が完敗した。鳴り物入りで北京に出かけたものの、見るも無残な敗北である。野球にその敗因を覗くことができる。準決勝韓国戦の試合前、選手間や監督同士の挨拶の態度に違いが見られた。韓国選手と監督は深々と頭を下げる。相手に対する尊敬の念と謙虚さが見て取れる。試合中のベンチ内の選手の表情は真剣そのものである。浮かれていない。笑いがない。
日本チームの参謀は「仲良しグループ」で組閣された。選手起用も疑問ありだ。お祭りムードでなかったか。相手を見下していなかったか。ひたむきさと謙虚さに欠けた。
北京五輪は終わった。中国政府は自国の国際化と経済効果を狙った。莫大な経費をかけた祭りの後、経済成長は減速するだろう。内需や輸出の伸びも心配だろう。五輪は中国の変革のペースを速める契機となりその方向を示したことは確かだ。が、その変革とは同国政府の旗振りに左右されるものではない。むしろイニシアティブは若者の手にある。国際的な視野をもち、海外で学んだ若者たちこそ自国の未来の在り方を冷静に見据えているからだ。