「末は博士か大臣か」は今じゃおとぎ話

明治末期の良き時代の菊池寛、綾部健太郎の生き方を描いた映画『末は博士か大臣か』。45年前の大映映画だ。川口松太郎が脚色し、監督は島耕作芥川龍之介も顔を出す。
男が目ざす出世の頂点が博士か大臣だった時代だ。今はどうだろう。大臣は猫の目のように変わり、存在感のある方は稀有だ。当事者能力さえ疑問視される人物さえ現れる始末だ。大臣に人材がいない。それでも男子の出世街道・・?
大臣に劣らず悲惨なのが何とか博士だ。大学院博士課程を出ても、常勤のポストにありつけず長年非常勤のまま。非正規社員と変わらぬ不安定な生活を強いられるケースが今ではザラである。

院生のとき、アルバイトに追われ、研究生活もままならない。院生の借金は平均340万円を超えるというから唖然とする。さらに、博士課程を修了したのち、大学や研究機関で、短期の任期付きで研究奨励金や給与をもらいながら研究している。
こうした人をポストドクター(ポスドク)と云うが、形態は一様ではなく、研究以外の仕事で生活を支えながら研究を続ける「支援なきポスドク」も多く存在する。
立派な博士も進路保証がない。大学院生の就職不安の原因は国の失政にあるのは明らかだ。こうした現状では、専門分野の研究に意欲を燃やす学生さんも大学院に進むのをためらうわけだ。
優秀な人材・頭脳が海外に流出し、ホンモノの政治家が容易に現れない。「末は博士か大臣か」はおとぎ話の感がある。