怪−長寿王国に暗部

“Tracking the Mysterious Fate of Japan's Oldest Citizens”(日本の最高齢者の奇怪な運命を追跡調査)
住まいや生死さえ明らかではない100歳以上のお年寄の行方が判らない。その数も10人や20人どころではない。俄かに厚労省地方自治体が大騒ぎになり、調査に乗り出したものの難航を極めている。

この“事件”は海外でも話題にのぼっている。冒頭のHeadlineのもとThe NY Times Weekly Review最新号が問題点を取り上げている。
「日本は世界一の長寿王国。これが長いあいだのお国自慢だった。背景に西欧には真似のできない健康的食生活と高齢者への配慮というこの国の社会契約が存在する」

「この自慢話も、先月末、都内足立区で国内最高齢の一人である111歳のKato Sogenさんが自宅のベッドでミイラ化しているのを警察が発見してからオカシクなってきた。Katoさんの娘さんは81歳、30年以上父親の死亡を隠し、年金をもらっていたというから詐欺の疑いが浮上する始末だ」
同じ都内杉並に住んでいるはずの113歳の最高齢女性だが、最後に姿を見たのが1980年代。役所に届けられている住所はとっくに空き地になっている。これまた怪だ。
神戸の最高齢の女性も所在不明。今生きていれば125歳だというから仰天する。

“Centenarians go missing, and fraying families are being blamed”(100歳以上のお年寄りの行方わからず、後に続くものは廃墟と化した家庭に対する批難の声)−−同紙のうら悲しい小見出しだ。


超長寿者を個別に追跡しているGerontology Research Group(老人学研究団体)によれば、日本の知念カマさんが115歳の誕生日を前に今年5月亡くなったため、世界最高齢者は114歳のフランス女性Eugenie Blanchardさん(1896年2月16日生まれ)になったと発表した。


“Missing centenarians cause angst in aging Japan”(100歳以上の行方不明の高齢者問題は長寿王国ニッポンに大きな苦悩を招来した)
ますます高齢化が進む我が国は、予測されたことだが、大変な難問を抱えてしまったことになる。
足立区の住民課の課長さんが「今度のケースは誰も不正だと疑いたくない。しかし、お年寄りの住所の報告を偽ったり死亡を隠し、年金を受給していたとすれば犯罪になる」と述べている。
「今回のケースは高齢者を養護老人施設に入れずに、家族が世話をすることを期待する社会の不安の反映だ。お年寄りの寿命が伸びれば伸びるほど、世話をする家族にとって荷が重くなる。親の世話をする子供自身が70代を迎え、自分の世話で精一杯になるからだ」と専門家筋は懸念する。

行方や生死すら判明しない100歳以上の高齢者が続々と現れたとなると我が国全体の問題となる。“女性の平均寿命83歳”だなどと「長寿国家」を自慢してきたニッポンにとって重たいボディ・ブローとなってしまった。
足立区の高齢者サービス課長Nさん曰く「150歳まで生きることは現実社会では無理だけど、日本の現在の行政においてはそれも不可能ではありません」
“あいまいな国ニッポン”。役所もいい加減なものだ。