South America“ああ無情!”

怒濤の南米諸国パワーに驚嘆した2010 FIFA World杯がこの二日間で暗転した。
“Don't call the Dutch underachievers anymore“(もはや力を出せないオランダ・チームなどと言うなかれ)とAP通信
過去五回のWorld Champion、世界Rankingトップの最優勝候補Brazilを倒したのは伸長170㎝、最も小柄のplayer、Wesley Sneijderのヘッディング・シュートだ。26歳の攻撃型MFは語る−−
“For 45 minutes we were full throttle. We were rewarded”(45分間我々はエンジン全開だった。勝利はそのご褒美だ)
“It just slipped through from my bald head and it was a great feeling”(ボールがボクの坊主頭を滑っただけだ。最高の感触だったよ)

Brazilに前半0-1のビハインドのまま、ハーフタイムを迎えたDutchのBert van Marwijk監督は後半に入る前に選手たちに戦術面の転換を指示した。“You have to play your own game. You have to patience against Brazil”(自分たちの戦いをすることだ。ブラジルの攻勢には我慢して耐えろ)
ヘッディング・シュートのヒーロー、小柄なSneijderも振り返っている。“At halftime we said to each other that we had to improve things and put more pressure on the Brazilian defense”(ハーフタイムで皆でミーティングを行なった。プレーを全面的に見直し、ブラジルのディフェン陣にもっとプレッシャーをかけることにした)

Brazilは前回W杯仏大会でcaptainをつとめたDungaを監督に指名した。名選手とは言え、前回フランスに0-1で敗退し、監督経験ゼロのDungaには余りにも重荷だったはずだ。サッカー王国ブラジルの国民は早速、監督の人選を非難し、準決勝進出の道を絶たれた同国チームへの失望感を隠さない。Dunga氏は監督辞任をほのめかしている。

Brazilより悲惨なのがMardonaのArgentinaだ。Brazilの敗退に祝杯を挙げたのも束の間、Germanyに0-4の完封負け、まさかの惨敗である。
が、今回のW杯でのGermanyの攻撃力は半端じゃない。予選ラウンドでAustraliaに4-0、次の英国に4-1。そして今回で五試合目になるが計12点のゴール・ラッシュだ。

USA TODAYのHeadline“Germany back in World Cup after 4-0 rout of Argentina”。まさに欧州の古豪がArgentinaに圧勝しW杯にカムバックした。

“I am so happy for Miroslav Klose to get two goals in his 100th game.(自身出場100回目のゲームでクローゼが2ゴールを上げた。こんな嬉しいことはない)と勝利に酔う独チームJoachim Loew監督は自国チームについて語る−−
“What the team showed, it was not only international level, but the level of champions. It was absolute class”(我がチームが証明したものは世界レベルの水準だったばかりか、世界チャンピオンに相応しい水準のものだったということだ。他の追従を許さない最高のレベルだった)
4-0の結果は優勝3回のドイツチームを準決勝に進出させ、MaradonaとLionel Messiを本国に送還することになった。
どの国のファンだろうか、“Very well-deserved win by Germany. Maybe Maradona will finally, FINALLY, persuade himself to see the advantage of retirement.”(願ってもいなかった価値あるドイツの勝利だ。これでマラドーナはようやく、遂に、自らに勇退を勧告する理由がみつかった)とコメントする。

苦渋と悲しみの表情を浮かべ“In a country where you breathe football, nobody will be happy about a game in which you lose 4-0”
(サッカーの風がそよぐ国において、4対0で敗北した試合をみて喜ぶ人など誰ももいない)と語るマラドーナ、今回の完敗の後どうなるか、目下不明だ。
余談だが、ドイツの応援席で自国のゴールに拍手し小躍りするAngela D. Merkel首相の姿に注目した。2004年に“多文化主義”に否定的な見解を示していたMerkelさんだが、多民族・多文化政策に大転換した。応援席の彼女の後ろに多くのアフリカ系女性が陣取り、ドイツの活躍に拍手を送っている。
自国で熱狂的な声援を送る人々は多彩だ。

ドイツ・チームの強みはbi-racial, multi-cultual色豊かなところにあろう。

準々決勝から試合開始前、両チームの主将が人種差別撤廃を訴え、プレーヤーが並んで横断幕を掲げる。

“SAY NO TO RACISM”---アパルトヘイトを克服した南ア大会を象徴するスローガンだ。
もう1つの準々決勝では1811年Spainから独立したParaguayがPK戦で惜しくもSpainに敗れた。その結果、準決勝に進む南米の国はUruguayだけとなってしまった。

サッカー選手にとってthe tie-breaking shootout(所謂PK戦)ほど生死の崖っぷちに立たされるものはない。“In an Instant,Soccer Players Become Heroes or Pariahs”(一瞬のうちに、英雄になるか世間ののけ者にされるかだ)

1994年のW杯、ブラジル相手に死闘を演じた伊チームのストライカー、Roberto BaggioのPK失敗は現在も語り草になっている。彼は今なお、汚名を着せられ生活している。