好不況問題よりhavesとhaves-notの天と地の差

“Job Data Casts Pall Over Economic Recovery”(経済回復に暗雲垂れこめる就業状況)
米国の景気動向を報じるThe NY Times-International Tribuneの最新号のHeadlineである。

労働省は五月の就業者数が431,000増加、失業率が四月の9.9%から9.7%に改善されたと発表した。が、内実は楽観視できない。増えた就業件数のうちそのほとんど411,000件の就職先は政府関連の職員。統計を上向きにするための雇用で、就業の大半は2〜3ヶ月の短期契約だという。

私企業への就職件数はわずか41,000件しか増加していないようだ。米日とも雇用情勢を安定的に好転させるのは並大抵じゃない。
その点上海万博に沸く中国の好況は目をみはるものがある。メディアはほぼ連日Rising Chinaを大きく伝える。

人民の月収・年収も年々飛躍的に上昇。「あと30年すれば日本人の平均年収を上回るだろう」と予測するエコノミストがいるほどだ。
本日の某紙は“北京の最賃20%引き上げ”、来月から月額960元(約13,000円)。現在の月800元から20%アップさせると報じた。
が、最大の問題は驚くべき貧富の格差だ。地域間、都市・農村間、業種間、階層間の所得格差は“社会的に許容できる一線を越えた”と新華社通信は警告する。都市住民と農村住民の所得格差は3.3倍、国有企業の経営者と従業員の収入差は約18倍、国有企業の経営者の所得と国民の平均賃金の差はなんと128倍に上るというから言葉が出ない。

汗みどろで働く労働者から一部の官僚や経営者が利益を収奪しているわけだ。
上海の繁華街が中国の現状を象徴する。“大富豪の邸宅の隣に襤褸姿の子供ずれの物乞いが群がる”---これが今の中国の偽らざる断面だ。その当否、是非は問うまでもなかろう。

haves(持つ者)とhaves-not(持たざる者)の格差は国によって程度は違うとはいえ、これほどの異常な格差を前にするとき、Rising Chinaは奇形・異様だと云わざるを得ない。