情知--心と頭

1975年4月30日サイゴン(現ホーチミン市)の陥落によってVietnam Warが終結。米軍は敗走し、夥しい南ベトナム人がボートピープルとなって亡命、難民化した。



当時は東西冷戦のただ中にあった。Vietnam Warは米国にとって共産主義からベトナム人を守ろうとする聖戦意識が強かった。一種の身勝手な使命感、missionを携え、容赦なき軍事作戦の一方、民生支援や文化宣撫工作を展開した。

未曾有の兵士を送り込んだ殲滅行動がベトナム人の人心を掴む成果を上げたか。結果は裏目に出た。

戦争終結の75年にドキュメンタリー映画『Hearts and Minds』が制作された。同年のアカデミー賞受賞作、TVで放映された。Vietnam Warにかかわった様々な層の人々の証言をもとに、この戦争の無意味さを告発したものだ。
それ以来、“Hearts and Minds”というフレーズが忘れられない。あえて日本語に訳せば“知情”、ここにSpiritsを加えれば≪知情意≫というべし。若者相手の講話や依頼された原稿のなかにしばしばこのフレーズを織り込む。

この『Hearts and Minds』が今月本邦初公開されるという。なぜ35年も経って、我が国のスクリーンに映されるのか。ワケがわからないが、この記録映画のタイトルのルーツが興味深い。JFKが暗殺され大統領を後継したL.Johnsonの次の言葉がもとになっている。
The film's title is based on a quote from President Lyndon B. Johnson:“the ultimate victory will depend on the hearts and minds of the people who actually live out there”「究極の勝利は、現地(ベトナム)で実際に生活する人々の人心よって決まるものだ」
このフレーズを米軍基地の存在に苦しむ沖縄の人々の立場に置き換えると明白だ。軍隊という存在が“Hearts and Minds”をつかむことがいかに難しいかがわかる。
折りしも、President Obamaより≪The Gulf Coast≫と題するメールが届いた。
メキシコ湾、ルイジアナ州沿岸の原油漏れ、海洋汚染の現況に対するmission statementである。

Barack Obamaは次のように結んでいる---
“There are hard times in Louisiana and across the Gulf Coast, an area that has already seen more than its fair share of troubles. The people of troubles. The people of the region have met this terrible catastrophe with seemingly boundless strength and character in defense of their way of life. What we owe them is a commitment by our nation to match the resilience they have shown. That is our mission. And it is one will fulfill. ”
ルイジアナ州と湾岸地域、そしてすでに過重な迷惑を被っている地域は現在、過酷な状況におかれている。地域住民は生命と生活を守るため、際限なく心身をすり減らしてこの恐るべき災禍に対峙されている。我々に課せられた責務はこれら地域住民たちが示されている現状回復のための辛苦に相応した国家としての役割を果たすことだ。それこそ我らの使命であり、達成すべき任務なのだ」

事態は極めて深刻だ。President Obamaは海外出張を延期して現地視察を繰り返している。果たして、悲惨な状況にある現地の人々の“Hearts and Minds”を掴むことが出来るだろうか。