メダル・チェーサーの歓喜と悲哀

北京五輪の中国の英雄、劉翔選手が110mハードル予選のスタートを前に、肩を落としながら「鳥の巣」から去って行った。怪我による棄権である。スタジアムに衝撃が走った。
劉翔選手の心の痛みは脚の痛み以上だろう。人民ネットの論評に注目したい。
劉翔にも怪我をする権利はある。13億人が自分の希望を彼1人の肩に乗せることはできない。選手が自分の体を尊重して欠場することは中国スポーツの進歩だ』
ゴールド・ラッシュに沸く中国スポーツ。金メダルの数で米国を圧倒するほどの勢いだが、ふと、冷戦下の東独との違いを感じる。東独が五輪をはじめ、世界選手権などで米露を押しのけ、メダルを独占した背景には当時の政治・経済体制があった。今の中国はrising China(躍進する中国)である。中国の豊かさが本物になり、成熟した国になればメダルの数は反比例するかもしれない。社会体制や経済の変化は競技力にも影響する。中国は今後も勝ち続けるだろうか。
余り目立たぬが、英国が昨日現在12個の金メダルを獲得している。英国五輪史上最高だという。ところがTeam Great Britainは大変な難題に直面した。経費が予算額より£100mオーバー、2012年ロンドン五輪に向けて政治問題化しかねない。北京五輪の英国のヒーローたちは思わぬ負債を抱えて帰国することになる。
歓喜のメダルの裏に悲哀が見え隠れする。