五輪女子サッカー予選-NZの気骨・ひたむきさ

北京五輪開会に先駆けてスタートした女子サッカー予選。日本女子はは世界ランキング格下といわれるNZチームと戦った。
試合開始当初からNZの勢いと動きがいい。素人ファンでもわかる。これが格下チームかと目を疑う。三年前だろうか、日本に0-6で完敗した相手だが、時が経っている。チームの戦力も違い、戦略・戦術にも磨きをかけてきている。この点を日本チームは織り込んでいたいただろうか。勝って当たり前の見下し意識が心のどこかに潜んでいたとみる。結果は日本女子が後半の最後あたりで、底力と技術力を発揮し、引き分けに持ち込んだが、観ている我々は敗色濃厚の気分だった。
スタジアムの観衆のムードをみると、NZの攻勢やゴール・シーンへの声援がむしろ多かった感じがする。判官贔屓でもあるまいが・・。
ドローで試合終了後の両チームの選手の表情・態度が興味を惹く。
日本選手はホッとして笑顔がこぼれる。NZの選手は悔しそうに肩を落としている。勝利への執念はどちらが強かったのだろう。
NZの国是や学生の自立した問題意識は際立つものがある。
先月半ば米ライス国務長官がNZを訪れ、クラーク首相などと会談。両国の関係強化を謳いあげたが、米国との自由貿易の促進となるとNZは首を縦に振らない。US-NZ二国間はもとより、P4諸国(NZ,Singapore,Brunei,Chileの4ヶ国)と米国との自由貿易にはコミットしなかった。
ライス国務長官のNZ滞在中、驚嘆するできごとが起きている。一部オークランド大学生などのグループが、イラク戦争を主導した中心人物としてライス長官を戦争犯罪者だと逮捕要求し、ライス女史を拘束した者には褒賞金を出すと申し出た。やりすぎだ、椿事だなどと笑ってられない。NZはいわずと知れた反核政策で平和希求の国民性をもつ国だ。昔から、経済大国、軍事大国への警戒心は強い。
まもなく太平洋戦争終結63年を迎える。当時NZも連合国に組み込まれ、枢軸国相手に戦った。1945年9月2日の戦艦ミズーリーでの降伏文書調印式にも、戦勝国の一員として代表が署名に加わっている。第二次大戦当時、米国の盟友だったNZは次のように米国を評価するかたわら、疑問を投げかけている。
ニュージーランド国民が尊重しているものは、アメリカ国民の大切にしているものと全くおなじものなのです。ニュージーランドには、アメリカと同じ若さと自由と民主的な考え方があります。両国では同じような政治的伝統と同じような環境開拓の力が、多くの共通点をもつ社会的態度や文化的価値を生み出しました』
『われわれニュージーランド国民は、この戦争で、特に太平洋地域においてわれわれの偉大な同盟国が果たしている輝かしい役割に対し・・・深甚な感謝の念を抱いており、両国間の戦後の緊密な関係を切望しているが、アメリカの経済活動の姿のなかには、ニュージーランド国民の大多数にとって不愉快きわまるものが存在している』
第二次大戦中にNZ国民が抱いていた米国観は60年以上経った今も変わらぬものがあるようだ。それは経済大国・軍事大国に対する警戒心ではなかろうか。その米国に追随する日本を相手に戦ったNZ女子サッカー選手達は日本チームをどのように受け止めただろうか。たたがサッカーだといって片付けられない。ひたむきで品位ある表情とプレーのなかに同国固有の国民性を垣間見ることが出来る。

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