インド女性の深刻な“Right to Pee”(オシッコ権利)

前任校での経験だが、20年程前、中国修学旅行をスタートし生徒たちを初めて北京に引率したときの一番の悩みは公衆トイレだった。まず滅多に見当たらないうえにドアがない。ドア付きのトイレは有料という按配だ。不潔でまさに<ご不浄>そのものだった。この頃格段に改善されたようだが、地方都市は大丈夫か?


今のインドが似たような問題を抱えている。例えば2000万超の人々が住む最大の人口密集都市Mumbai(旧Bombay)。住民の抱える共通の難問は人口に比して公衆トイレが少なすぎる点だ。

最近の統計によればインドの一般家庭の半分以上がトイレ無し。過去10年間を見ても国が豊かになるのに反してトイレ事情が悪化している。こうしたなか、ユニークな運動が生まれた。称して“Right to Pee”campaign。<オシッコ権>(獲得)キャンペーン。問題にしているのは公衆トイレに関する政府による二重基準だ。

地方の村では男女とも外の畑の中で用を済ます。が、女性は男性と違って嘲笑されたりセクハラにも堪えなければならない。そのため、村の女性はセクハラに遭わないよう、夜明け前にグループを作って用を済ます。
別の意味でMumbaiの状況は酷い。公衆トイレに頼らざるを得ない市民が何百万人、大概場所は薄暗い汚い路地の建物のなかだ。おまけに政府が用意しているトイレ数の男女差がヒドイ。男子用5,993に対し、女子用わずか3,536。さらに男子には2,466の小便専用が設けられている。首都New Delhiの場合、男子用公衆トイレ1,534,女子用132とその差は桁違いだ。


大抵いつも、男の係員が公衆トイレを監視、使用料を徴収している。ケチ臭い汚職がはびっこっているインド。公衆トイレも例外ではない。男子の場合もトイレ使用は有料だが、オシッコだけの場合無料だ。壁に向けての立ちションで済み手洗いはない。が、女性は大小の別なく使用料を払わなければならない。

「オシッコだけですと言っても、外から見分けがつかない」と言われ、料金をせがまれる。

かくして、女性の一日の生活パターンが画一化する。多くは行列と監視の目をさけるべく早朝トイレにでかける。水は多く飲まない。そして、いつも小銭を持ち歩く。

トイレ不足は健康問題に結びつき、膀胱炎を引き起こしている。公衆便所の驚くべき男女差別解消を目指し闘うインド女性のRight to Pee campaignは始まったばかりだ。