喝采!Moreau, Deneuve銀幕に登場

ヌーベルパーグの一時代を担った仏女優Jeanne Moreauも今やスクリーンでお目にかかるの無理だ。御歳82歳。日本と違い、老齢をひっさげて銀幕に出ることはまずない。Sohia Loren(76歳)もLiz Taylor(74歳)もそうだ。往時のファンの抱くイメージを壊したくないからだろう。
ボクが近況を気にしていた仏二大女優がこのMoreauともう一人、二世代下のCatherine Deneuveだ。Deneuveも早や66歳。親日家なのか今年2月、3年ぶり来日している。


我がファンMoreauとDeneuveが近々、思いがけなく日本の銀幕に顔を見せるというから欣快だ。
Jeanne Moreauの方は、ヌーベル・バーグの先駆者Louis Malle初の監督作品“Ascenseur pour lechafaud”『死刑台のエレベーター』(1957年)のニュープリントで登場する。この名作の翌年59年の名品“Les Amants”『恋人たち』を巣鴨の二番封切館で見た。『死刑台・・』と同じくモノクロ作品。物悲しく流麗なラストシーンが今なお記憶に残っている。


増村保造監督が同59年6月「映画芸術」誌上で、“Louis Malleの『恋人たち』”を≪現代フランスの“私映画”≫と題して、ラストシーンについて次のように論評している−−
「恋の終り、・・・『恋人たち』のジャンヌ・モローは、白々とした朝の空気の中を、目を暗くくぼませ、唇を白く結んで、いずことなく漂って行く。彼女はもはや幸福ではない。前途の希望もない。彼女はただぼんやりと繰り返す。『だけど後悔しない』と」

『化粧を整えるのは、カフェのトイレ近く。車の陰に隠れて着替えることさえあった』と『死刑台・・』の撮影当時の模様を語るJeanne Moreauは老いたとはいえ、その生き方には揺るぎはない−−
トリュフォー、アントニオーニなど名監督の作品に出演した彼女は「役者を選んだのは芸術表現の手段としてだけではない。私の生き方そのものだ」と言う。出演料が高額でも、女性を蔑むような役は拒んできた。彼女がいま気にしているは仏政府の排外政策だ。犯罪対策を理由に、ジプシーなどと呼ばれ差別されているロマ人を国外追放していることだ。

Moreauは「ショックを受けている。私の格言をお教えしましょう。『少数派はいつも正しい』」と毅然として語る。
一方、Catherine Deneuveは旧作のニュープリントで登場するのではない。作品名は『隠された日記 母たち、娘たち』。娘、母、祖母の三代の女性を描いた作品のなかでドヌーブは娘と祖母に挟まれた母を演じる。


気品に満ちた(お高い感じもする)フランス名女優の一人だが、かの彼女は今度の新作への出演に際し、謙虚に語っている−−
「私自身は女優という特殊な職業だったので、偉そうなことは言えませんが、同世代のフランスの女性は闘って自由と平等を勝ち取ってきました。しかし、世界的に見れば、まだまだ男女格差はなくなっていませんね」