東西のデモ模様、独逸の逆戻り?

中国内陸部の都市で相次いでデモが連発している。学生を中心とした「反日デモ」はもっぱら尖閣諸島海域の領有権をめぐるナショナリズムに起因するものならばいささか由々しき事態だ。中国外務省は日本製品の不買や商店や日本車破壊行為に対し、「気持はわかるが、違法行為はよくない。理性的に」となだめ、戒めている。


デモ参加者の表情が明るい。愉快気に携帯シャッターを構えている。まるでお祭りムードだ。胡錦濤主席や温家宝首相の声明が全く聞かれない。両氏とも親日的穏健派だ。今回のデモ、習近平氏の“ポスト胡”内定とも無関係でないようだ。軍部タカ派習近平氏をトップに押し上げようしている。驚異的な経済成長に驀進する反面、貧富格差の拡大というアキレス腱を抱える同国の不満層のマグマが国家体制、党上層部、既得権益層に向かわないようにガス抜きを狙った官製デモの臭いがしてならない。

近年折りに触れ「反日デモ」が発生するが、「反米デモ」はほぼ皆無だ。中国人は米国をライバル視し、“美国”への羨望の眼差しは強い。

我が国政府は毅然とした抗議声明を出せない。水面下での協議はあるかも知れぬが、ホトボリが冷めるまで模様眺めだろう。
EU圏もざわついている。フランスでは政府が進める年金制度改革に反対するデモが各地に拡散している。全国で数百万人、高校生も参加し、休校も少なくない。シャルル・ドゴール空港もとっばっちりを受け、一時、航空機燃料などの供給が停止されるありさまだ。どのように終息するのか。サルコジ大統領もこののままじゃ“孤児”になる・・?


隣国イタリアでもデモ。雇用状況の改善と労働者の権利拡充を求めて、ローマで労組が数千人規模のデモを繰り広げた。
さらに雲行きが怪しくなりつつあるのがドイツだ。第二次大戦の反省と教訓から、多民族・複合文化国家創り進めていたAngela Merkel首相が“Multiculturalism has 'utterly failed'”(多文化主義は完全に失敗した)と表明。旧東独ポツダムでの保守系キリスト教民主連合青年組織の集会でのスピーチだ。

「60年代初め、我が国は外国人を労働者として受け入れてきたが、彼らはドイツに居すわってしまった。我々はこの間、自らを欺いてきた。彼らは我が国に定住することなくいずれ帰国するだろうなどと言ってきたが、現実は違うものとなった。多文化社会を目指し、互いに違いを超えて協力はしあい生活をエンジョイしようとする試みは完全に失敗に終わった」
Merkel首相のこの表明を耳にした群集は歓喜スタンディング・オベーション。同国の某シンク・タンクの調べによれば、単に生活の利益を享受するためにドイツに移住してきた外国人が自国にばびこっていると考えているドイツ国民が3割いるという。

また不気味なのは、なんとドイツ人の13%がAdolf Hitlerを連想させる独裁者“Fuhrer”の登場を歓迎していることだ。そしてイスラム教徒の活動の制限を求めるものは約60%に達し、さらにユダヤ人の影響を懸念している国民が17%存在するとシンク・タンクは報告している。
ドイツよ何処へ向かうのか? あの時代に逆戻りするのか。EUの盟主だけに米国に劣らず心配だ。