我が国若者の就業情勢--非正規・フリーターは世界で異質?


米国やEU圏も失業率が一向に改善されず、雇用創出にもがいているが、我が国の若年層、青年層にのしかかる就職難は世界でも異質だ。
The NY Times東京支局長Martin Fackler氏による最近のレポート“Japan's Young See Their Paths Blocked”(前途を遮られた日本の若者)に注目した。

大手自動車メーカーで将来を嘱望されていた30歳の優秀なエンジニアHさん。新に開発のデザインで賞まで獲得しながら、多くの若者同様、非正規従業員として、雇用保険にも加入出来ず、給与は正規社員の半分、ある種の季節労働者扱い。正規社員の大半は40代以上、regular employeesと称され、30歳のHさんはirregularというわけだ。
regularを目指して10年以上頑張ったが、希望叶わず遂に退職してしまったHさん「日本の企業は熟年社員の雇用を守るため若年層を切り捨てている。日本では私のような若者は門前払いだ」と言って二年前台湾へ。「台湾では私のキャリアを完全に認めてくれる」
今Hさんは中国語の勉強に余念がない。
Fackler支局長は「かつての経済大国日本の退潮は急激だ。こういう時こそ生産性の向上と技術開発のため若者のエネルギーが不可欠なのに、日本は逆方向に向かっているようだ」と懸念する。

“The Truth of Generational Inequalities”(世代間平等の真実)の共著者、城繁行氏(36歳)は「若者の間には、どんなに一所懸命働いても、前に進めないという心理が蔓延している」「四方の壁に頭をぶつけるみたいで、若者にとって全ての道が通行止めになっている」と論評。

都内名門私大4年生の女子学生Iさんの志望を伺うと皮肉な答えが返ってきた。「大企業で働く気はあまりせん。非営利環境団体の仕事に就くつもりです。そこでもまた正規従業員からはじかれてしまうかも知れないけれど」
「何か人と違った仕事にチャレンジする自由が欲しいけれど、日本では新しい仕事を立ち上げるためにはコストがかかり過ぎます」

10年前、同じく有名私大3年生だったKさん(女性)が回顧している。戦後の日本経済の順風満帆な進み行きのなかでトップ企業就職を夢みていたが肩透かしを喰らい失敗。10社の面接を終え、軽いノイローゼに陥った。
そこで彼女が気づいたのは「超勤続きの企業戦士などにはなるべきではない」ということだ。

その結果、Kさんは“freeter”(フリーター)を選んだ。契約期限つきで超低賃金。Kさんも今では29歳、「何も望んでフリーターをやっているわけじゃないの。それにしても私自身こんなに高い代償を払わなきゃならないのかしら?」
我が国の20代〜30代の有能な大卒者が“irregular”か“freeter”だとは・・。世界の珍風景だというべし。