Nobel Peace Prizeに歯切れ悪い日米

Nobel Peace Prize 2010は服役中の中国反体制活動家劉暁波(Liu Xiaobo)に授与されることになった。


オスロの平和賞選考委員会は“The Nobel Peace Prize 2010 was awarded to Liun Xiaobo 'for his long and nonviolent struggle for fundamental human rights in China”(中国の人権問題に対する長きにわたる同氏の非暴力の闘い)を授賞理由に掲げた。同委員会委員長は授賞決定の最大の理由として「民主主義と人権の尊重が世界平和に不可欠だからだ」とコメント。

Ban Ki Moon国連事務総長はLiu氏の受賞は“a recognition of the growing international consensus for improving human rights practices and culture around the world”(人権の運用を改善しようということが世界的な合意となりつつあることを、改めて認識させる出来事だ」との声明を発表した。

米国の反応はどうか。President Obamaは中国当局劉暁波氏の早期釈放を促すとともに、服役中のこの反体制活動家を“an eloquent and courageous supporter of human rights and democracy”(発言力があり勇気ある人権と民主主義の擁護者である)と評価したが、Obama氏の声明について米国務省は(米国の失業率の悪化が人民元為替レートの低さにあると中国に圧力をかけ)「(米中関係は)幅広く成熟している。人権の問題では見解が異なるが、それでも他の建設的チャンネルを追求できるととい関係だ」とトーン・ダウン 。



The NY Timesは“China Emerges as a Scapegoat in Campaigns Ads”(中間選挙キャーンペーンにおいて突如、中国がスケープゴートに)のHeadlineのもと“With many Americans seized by anxiety about the country's economic decline, candidates from both political parties have suddenly found a new villain to run against:China ”(自国の憂慮すべき景気低迷に多くの米国が取れつかれる中で、両党候補は突如そろって選挙戦の新たな標的を見つけた。悪いのは中国)だというわけだ。米国はいまや人権問題よりも経済・景気問題。今回の劉暁波氏のNobel Peace Prize受賞を契機に人民元の切り上げを中国に迫ろうとという思惑だ。

我が国PM Kanの歯切れも悪い。China Dailyは“Japan expecting to improve China ties:spokesman”(中国との関係改善を期待する日本)と我が国政府の足元を見透かした論評を掲げる。こう先手を打たれては中国を批難できない。
当の中国は劉暁波氏のNobel Prize受賞に怒り心頭。金曜日、北京で開かれた民主化運動家たちによる劉氏ノーベル平和賞受賞祝賀会に警官隊がなだれ込み、祝宴を阻止するありさまだ。

China DailyもBeijing Reviewも劉暁波氏のNobel Peace Prizeに一切触れていない。
中国在住者の初のNobel Prize受賞を中国当局は真っ先に慶賀・祝福すべきなのに、ノルウェイに警告し、中国メディアの口を完全にふさぎ、国民に知らせない、語らせない。はしなくも、economic giantにのし上がりつつあるRising Chinaの未熟な後進性を露呈するかたちとなった。

China Dailyに“Society of have nots”(持たざる者たちの社会)なるコラム記事が見られる。“Bribery and corruption have become common in government offices. This, from a more serious perspective, reflects that China lacks an effective system that would turn proposition into reality ”(賄賂と腐敗が政府機関に横行している。さらに深刻な見方によれば、これは中国が改善策を具現化する有効な機能を欠いている現われだ)と手厳しい。

have nots=low-wage workers、最近流行り言葉となっているワーキング・プアに対する中国当局の態度は冷酷そのものだ。北京では、貧しい人たちをゲットーの如き“village”に幽閉し、ガードマンが人々の出入りを取り締まっている。当局はこの施策が、犯罪件数減少につながっていると言うが、ワーキング・プアの大半は地方からの出稼ぎ労働者だ。“villages”への閉じ込めは形を変えたアパルトヘイトだとThe NY Timesは批難している。これも人権無視のRising Chinaの影の部分だ。