冷遇・蔑視されるアジア諸国からの移住労働者

アジアの国情といえば、とかく、Rising China & Indiaに眼を注ぎ日本の現状と比較しがちである。二つの大国を俯瞰するだけで、アジアの庶民の実態や悩みに目をそらしかねない。
現在日本はアジア各国から約19万人の労働研修生を受け入れている。10代後半から30代前半の就労研修者である。工場や農村で働いている。来日の目的は技術の修得にある。1990年代に我が国政府が計画を立ち上げ、国際的に認められ支援を受けている制度だ。

ところがこの研修労働者の待遇がヒド過ぎる。少子高齢化が急速に進行し、労働者不足を補うための施策だが、実態は安上がりの“コキ使い”だ。

フィリピン、セブ島から日本に移住しほぼ3年になる28歳のCatherine Lopezさんも研修者の一人だ。日本の大手自動車メーカーの部品の組み立て作業に従事、一日14時間労働、時には週6日勤務を強いられている。月給135000円、時給は700円弱、同社の定める最低時給760円にも及ばない冷遇だ。Lopezさんは「部品組み立てのK鉄鋼工場で同僚が6人働いているが、社長に『指示通り働くかイヤなら泳いでフィリピンに帰るかだ』とつるし上げられている」とイジメの実態を告発する。

「私たちが日本にやってきたのは、進んだ技術を習得するためです」とMs Lopez。
「当社で働くのが嫌なら、国へ帰ればいいでしょう」とT鉄鋼所の女社長。


この外国人(主にアジア人)研修生の就労受け入れ計画を立てたJITCO(財団法人国際研修協力機構)も日本企業に見られるかかる外国人研修生への冷遇・イジメの実態を認め、改善を促しているが一向にラチがあかない。背景に大手自動車企業が中国などアジア諸国に製造拠点を移し、現地でのcheap laborを意図している戦略がある。
広島のlabor consultantのKさんが指摘する「こうした企業は日本人労働者を雇えば、相応の賃金を払わなければならない。が、海外からの研修就労者ならば雀の涙程度の給与を払えばすむ。日本人はこうした“ウマミ”を捨てきれないのです」

フィリピンといえば、第二次大戦中日本人将兵約50万人が戦死した最大の激戦地の1つである。一昨日15日日本大使館主催の日本人戦没慰霊祭が行なわれた。式典はルソン島ラグナ州カリヤンにある「比島戦没者の碑」の前で開催された。

マニラ日本人会の小川会長は「戦闘や飢え、病で多くの日本人が斃れた。今日の日本の繁栄はそうした犠牲のうえに成り立っている」と追悼したうえで「110万人もの犠牲者を出したフィリピンの人々の不断の努力も心に刻まなければならいない」と挨拶した。
日本は大国意識を払拭し、アジア諸国のhaves-not(持たざる人たち)に対してsympathy(共感・共鳴)を抱かなければなるまい。