Povety Line(貧困線)の曖昧さと体面保持のニッポン

The NY Times Times Weekly Review最新号一面のHeadline---
“A Shaken Japan Faces Harsh Reality: Poverty Exists”(厳しい現実に直面するニッポン:存在する貧困)---The NY Times東京支局長Martin Facklerのコラムに注目した。


10代の娘一人を育てる母子家庭。51歳の母親の苦労は並大抵ではない。午前中は弁当屋さんで働き、午後〜夕方になると夕刊配達だ。二つの仕事に追われて年収は150万円以下。昨秋政府が初めて公式に定めた貧困ラインにも届かない現実にショックを受けた。

「貧困なんていう言葉は使いたくないけれど、ウチは紛れも無く貧困です」「でも、日本では貧困と云う言葉が馴染まないの」とこのお母さんは言う。
米国のPoverty Lineは明確だ。2006年度2人家族で年収約150万円以下。2007年度の統計によれば、貧困ライン以下の米国民は3,730万人だというからビックリするがはっきりしていて解りやすい。


CIA Fact Bookに世界各国のPoverty Line以下の人口統計が載っているが、日本はNAとある。統計がないためカウント出来ないというわけだ。
「貧困線は、厳密な指標ではなく、貧困を計る恣意的な指標の1つでしかない。貧困線を若干上回る収入と若干下回る収入の間に大きな生活水準の差は無いためである」との意見もある。
ある意味でお説ごもっともだが、「日本人は、乏しい収入にあえいでいても、体面を保とうとする」とThe NY Timesの記者は指摘する。“恥の文化”の国民性か・・・。

ところで、年収150万以下で娘さんを育てている母親だが、この娘の高校の制服代に65,000円かかる。お蔭で一日二食で済ませている。こうした貧しい生活を強いられている日本人の8割がいわゆる“Working Poor ”と呼ばれ、低賃金で非正規労働者、保険と福祉の保障はゼロだ。
「豊かな国における貧困は薄汚れた床でボロを着て生活することを意味しない。貧困者は、携帯電話や車はあるとしても、自活以外の社会生活から疎外・抹殺されている」と某私大の社会福祉専門の教授は説明する。
60歳の男性Yさん、妻と離婚後不景気となり1年前に失職した。待っていたのはホームレスだ。役所に三回生活保護を申請したが、まだ働ける年齢で体力もあるという理由で門前払いを喰らった。
Yさんは「日本ではいったん転落すると救ってくれる者はいない」とわずかな国からの支援金のもと、夜間警備員のパートの仕事をしている。
折りしもOECD加盟29ヶ国にみる、2009年上半期における若年層25歳以下の失業率が発表された。

最悪はスペインの39.6%、日本は二年前より2.7%悪化して10.3%。ドイツと同率のワースト23位。平均値18.4%に比べて、我が国はまだ豊かと云うべきか・・それとも体面を保つために隠された数字があるのではないだろうか?