地に帰る桜花

五月半ばの陽気である。まるで晩春のようだ。
小金井街道を往来する民間バスの乗客がかなり多い。そういえば、近くの小金井公園の桜はどんなものだろう。
気懸かりだったこともあり、比較的最寄の馴染みの店に遠来(from overseas)の友人を招いた勢いで、会食後、小金井公園に繰り出した。10人連れの花見だ。
桜の下でビニール・シートを敷いてお花見グループがあちこちに見られたが、思いのほか疎らだった。

桜が地に帰りつつあるからか・・。それも佳し。久々に江戸東京たてもの園を訪れた。新たに移築された建物はほとんど見られないが、多少の模様替えの跡もある。受付に英文パンフがあるのがいい。入園者の数もさほど多くもなく、さりとて閑散としてはいない。適当な入りというところだ。

八王子千人同心組頭の家」「高橋是清邸」にあがり、「武居三省堂(文具店」「丸二商店(荒物屋)」などを覗き、「子宝湯」に入り、最後に縁深い「鍵屋」のあがり框をチラリと見て外に出た。1856年に建てられたと伝えられる「鍵屋」は震災・戦災を免れたとはいえ、この居酒屋でボクが友人とドジョウ鍋をつついたのは1970年初頭である。下谷言問通りにあったその店が移築されいるのである。店中を覗くと酒も肴も当時の値段、懐かしさのなかに、時の移ろいにあらためて驚く。

“年々歳々花合似たり 歳々年々人同じからず”“朋あり 遠方より来る 亦楽しからずや”の休日だった。
都内の桜花爛漫は終焉、あと数日経てば葉桜となろう。