いま一度心に刻むべき20世紀の巨人の遺志

20世紀を代表する経済学者の一人、Paul A. Samuelson博士が他界した。享年94歳。1970年に第二回ノーベル経済学賞を受賞。が、この賞は「Samuelsonにノーベル賞を受賞させるために創設された」と言われ、いまなおいわくつきでノーベル賞委員会では同賞の廃止を求める声もあるようだ。
ノーベル経済学賞問題はさておき、同氏の著書『経済学』は半世紀近くにわたり、経済を学ぶ学生たちの必修教科書となっていた。

70年代以降、市場重視のマネタリズムの台頭により存在感が薄れたが、最晩年の昨秋、金融危機の際、ブッシュ政権下での規制緩和の行き過ぎを批判、不況脱却のために財政出動を説く理論が再び脚光を浴びた。

その路線はObama政権に受け継がれ、Samuelsonの甥にあたるLawrence H. Summers氏が国家経済会議(NEC)委員長に就任している。
今年Barack Obamaの受賞で論議沸騰のノーベル平和賞受賞者の旧ソ連の反体制知識人(物理学者)アンドレイ・サハロフ(Andrei Sakharov)博士がなくなって今日14日で早や20年が過ぎた。核物理学者として水爆製造に果たした功績で得た特権的地位を放棄。KGBによる迫害や7年もの流刑にめげず、民主化と人権擁護を訴え続けた。同博士が死の直前に発した言葉は、いまのロシアの現状にもあてはまり、重いものがある。

「きちんとした市場経済への移行の遅れは国を破滅に導く」
「帝国的野心に基づくソ連の冒険的政策は国民にとって重荷だ」
ソ連体制が抱える問題の巨大さ、克服の難しさを誰よりも知っていた”のがサハロフ博士だと民主化運動の同志だった某歴史家は述べている。
心臓麻痺で急死するする直前に「少し休む。明日も闘いだ」との言葉を遺した博士の一生は、いまなお政治の民主化市場経済の定着に苦しむ旧ソ連や東欧圏に、それら難題の打開に向けての示唆と勇気を与えてくれるといえよう。(A紙夕刊≪窓≫参考)
昨秋から昨暮にかけ、惜しまれて他界した筑紫哲也氏、そして加藤周一氏など国内にも現代から未来に向けて継承すべき言葉を遺した敬愛すべき知識人や巨人がいる。その言葉から、行間から心に刻むべき遺志を汲み取りたいものだ。