「(心を育てる)母子手帳」とトップリーダーの徳とは

小中高生の校内暴力が3年間で7割増、怒りを制御できない子供たちが激増している。イジメ件数は減っているというものの、“イジメ自体が減っているのではなく、時間がたって学校のイジメ発見の取り組みに積極性が薄れ、報告が減った可能性がある”と文科省は見ている。

対教師に対する暴力、器物破損など、ボク自身も仕事柄、いつも懸念している。怒りをコントロールできない生徒に手を焼いている教師が少なくない。子供の情意面の教育、躾についていえば、主たる場は家庭にあろう。
都立高校で長年カウンセラーを務めてきたYさんは指摘する--
少子化で大事にされ、他者との間で我慢を経験することなく育っている。感情のコントロールができない理由はそこに根ざしている」
ただ統計と要因の分析だけで済ますべきではない。

10年以上前になるが、京大教授k先生(哲学)が≪21世紀への視座:100人インタビュー≫のなかで、“モラルの再生に向けた方策は・・?”なる設問に答える形で次のような注目すべきコメントをおこなっている---
「はっきり言って即効性のある妙案はありません。数世代かけて土台を再構築していくしかないと思います。それにはまず、教育、とりわけ家庭教育・・」「・・現代の家庭には倫理性を育てるノウハウがない。ですから、『こころの母子手帳』みたいなものをつくる必要があります。・・そのノウハウを親たちに伝授するわけです。『マニュアル化や価値観の押しつけはよくない』といった声が出るかもしれませんが、最低限の“土壌”を整備すべきでしょう」
気の長い地道な作業だが、傾聴に値する。
学校や組織社会での躾教育はいかにあるべきか。まず問われるべきはトップリーダーの人格・資質だろう。つまり人徳の有無だ。

「人を使い、人に献身を求める立場にある指導者が、何を心がけ、何を行動に表わさねばならないかを知るか知らないかがその徳を決めるであろう」(湯川裕光『瑤泉院』より)
会社の社長さんはもとより、小中高の校長も心に刻むべき言葉だ。