確かな眼力とぶれのない不屈の二人の偉人--In Loving Memories of S. Kato and Ted to be continued

いま米国では、Ted Kennedy逝去の反響は政界のみならず一般国民のなかでも大きい。党派・宗教・肌の色を問わず惜別の念に溢れている。
Tedが、教育問題・市民権問題から医療・社会福祉問題にいたるあらゆる法案の成立に大きく貢献し目覚しい足跡を残したからだ。なかでも同氏が最も精力を注いでいたのは、目下、国民世論沸騰のhealth care reform(医療保険制度改革)法案の議会での承認のための闘いだった。
Tedの死はこの法案の先行きにどのような影響を及ぼすだろう。Obama政権にとって死活的な最重要課題の1つだけに目が離せない。

今日のA紙夕刊掲載の「居酒屋のムッシュ 加藤周一」なるコラムが興味深い。
中国で激しい反日デモが繰り返された2005年の3月に北京の若い記者が日本のナショナリズムなどへの考えを加藤さんに尋ねた。
加藤さんは次のように答えたという「日本を純黒(好戦)でも純白(平和)でもない灰色と見て欲しい。そうすると日本の実像が見えてくる。自国を見るときも同じだ。中国も天国ではない。絶対的判断をせずに総合的に見ることで相手を理解し、自分も理解する」
医師でもあった加藤さんは、医学面でも米国一極集中を憂慮する神戸の某病院長に対し「医学でも『アジア連合』を目指さないといけないね」と述べている。この加藤さんが生前最後のTVインタビューのなかで「Obamaは頭のいい政治家だ。彼の言う“Change”はアメリカ人の感情の深部に触れたうえでの言葉だ。だから共感を受けるんだ」というような言葉を遺した。
加藤さんはPresident Obamaの誕生を見ずして逝ってしまったが、Barack Obamaがキャンペーン期間中、盛んに“我が国はThe United States of America”だと、国民にuniteの必要性を訴えていた。

その加藤さんだが、「居酒屋の加藤周一2」(1993年:かもがわ出版)の中で米国についてのコメントが面白い。
某氏が「『夕陽妄語』に『アメリカ合州衆国(合衆国の翻訳は誤り)に対してのヨーロッパ合州国ということになるだろう』と書いておられますね。早く直せばいいのに現在でもそのままで、最近では『ヨーロッパ合衆国』という使い方をしているのも見かけます」と指摘したのに対して、次のように言う。
「いくら言っても『アメリカ合衆国』を直さないねえ。教科書も直さない。これは意見の食い違いじゃない。“合衆国”が間違いで“合州国”が正しいに決まっています。だから一日も早く直せばいいのに直さない。これは、頑固だという以外にないね。
それから、細かな話になったときに“衆”だとまずいんですよ。連邦政府に対する、つまりワシントンにたいする州の独自の度合い、といったような議論するとき、合州国と書いた方が便利なんです。・・・」
Barack Obamaの強調したThe United Statesの意味は加藤さんの言う“合州国”か?
明日ボストンで催されるTed Kennedyの告別式で予定されているPresident ObamaのEulogy(追悼演説)。世界が注目する。

夕刻、近くの公園をのぞく。犬を連れた親子連れちらほら。Swine Flu感染拡大の報をよそに、晩夏を惜しむ姿あり。