映画ロケ地に人気沸騰の庄内地方--が、憂色の米作農業

山形県庄内地方をロケ地とした映画が続々ヒットしている。
庄内ロケのきっかけは山田洋次監督の『たそがれ清兵衛』。原作は言わずと知れた鶴岡市出身の藤沢周平さん、庄内藩がモデルとなっている。その後の『蝉しぐれ』『隠し剣鬼の爪』『山桜』もそうだ。そして、米アカデミー外国映画賞を受賞した『おくりびと』のロケ地も庄内地方。昔ながらの日本の風景が残り、屋外ロケに適しているからだろう。

が、日本海をのぞむ広大な農地はどうだろう。藤沢-山田洋次作品にも貧しい農民の姿が描かれている。美味しい庄内米にありつき、ボクたちは肥沃な農地・米作を思い描き勝ちだが、現実は憂色濃い。、日本海からの寒風がいつになく冷たい。450年の歴史をもつ農家、16ヘクタールの米作地を眺めながら、今年57歳の当主Sさんが嘆く。
「日本の農業には金も無ければ、若者いなく、未来は無い」

庄内地方の農地の価格が15年間で70%も低落した。1990以来専業農家は半減。全国的にもこの10年間で米作は20%減、今では60%を輸入米に頼るありさまだ。
中でも最も深刻なのは、農業従事者の高齢化が進み、70%が60歳以上だという。
「もし農業が活性化されれば、地方経済は勢いづく」東大農学部H教授は警告する。「今のまま無策のまま放置されれば、我が国農業は死滅するだろう」
こんにちの庄内地方での映画ロケ人気の賑わいは、皮肉にも昔と変わらぬ貧しい農家の断面を映し出していないだろうか。