あらためて考える“言葉のわきまえ”

次期国務長官に指名されたHillary Clinton女史が外交問題のキーワードとして使った言葉は“スマート・パワー”。同氏にお似合いのキーワードだと思う。
ちょうど二年前、高校生に“言葉のわきまえ”と題して、定期刊行紙のなかで次のように呼びかけたことがある。
「時代をリードする言葉がある。世相を反映する言葉がある。いつの世にも若者たちの流行語を耳にする。世代によって違和感があったり、馴染めないフレーズもあった。でも、嫌悪感を覚え、耳をふさぎたくなるような言葉に出逢う経験は、これまで学校においてはほとんどなかった。
 いま言葉について、いつになく気になることがある。言葉にも格差がみられる。特に若い世代のなかに【言葉の二極化】が顕れている。
(中略)
「言葉は『思考のドレス』だと言われる。言い換えれば、『心の正装』である。『正装』はぼろぎれではない。薄汚いものであってはならない。が、言葉はいつも『正装』するわけではない。日常会話で使う言葉のほとんどは『普段着』だ。普段着の言葉は、思わず口をついて出る。じっくり思考する余裕もなく、気がついた時にはすでに言葉を発している。マニュアルや規則・規範などはない。行動様式にモラルがあるのと同様、ボクたちが何気なく交わす言葉にもモラルがある。それは『気づいたときにはすでに終結している』性格のものである。普段の暮らしの場合にも言えることだが、ボクたちの話し言葉や書き言葉のなかにも、暗黙の秩序とルールのようなものがある。そのことのわきまえなしに、『言葉の品位』は保てない。品位なき言葉は心に響かず、相手に伝わらない」
(中略)

『若いころ学ぶことを怠る者は、過去を喪失し、未来は行き止まりになる』(エウリピデスの詩の断章より)