高齢者と老人は同じではない・・

「高齢者はますます増えてゆくが、残念ながら老人は減ってゆくだろう。だれでも老人になれるかというとそんなことはなくて、年を取ったあげくに到達できるひとつの境地ではないか」
誰かからか忘れたが、このようなことを聞いたことがある。なるほど、言い得て妙だと思う。
例えば古希の70歳、男子の平均寿命79歳のこんにち、高齢者に入る年齢には違いなかろうが、果たしておしなべて老人だと言えるだろうか。
この『古希』という言葉だが、70歳まで長生きする人など極めて稀だった唐の時代(7世紀初頭から10世紀初頭)の詩人、杜甫の七言律詩「曲江」に由来する。

 “酒債尋常、行く処に有り。人生七十 古来稀なり”
(酒代の借金なんて珍しくない。行く先々、そこらじゅうにある。いいさ、どうせ人間、七十まで生きられはしないんだ)

 数えで八十歳のときの富安風生の句がある。
 “生きることやうやく楽し老いの春”
見事な老人の境地と言うべし。