リベラルでぶれない巨星墜ちる-“知の戦後”の終焉か

加藤周一氏が逝った。最も信頼できるオールラウンドな自由人。リベラルでぶれない評論家だ。現代我が国最高の知識人をボクたちは失くした。高齢とはいえ無念だ。
氏はこの国の文化を、「今=ここ」を重視する部分主義だと特色づけ、内向き思考につながり世界全体を見渡すのが苦手であると憂いた。
氏の数々の箴言の一部を次に記録しておこう。
「≪永遠の現在に生きる≫というのは、心理学的にみて、また、例えば、フランスや中国といった他の文化と比較してみて、過去--とりわけ思い出したくない不愉快な過去--を簡単に忘れてしまい、ごく近い未来にしか関心を持たないという日本人の才能を表わしています。永遠の現在とは、日本文化は、過去から独立に、あるいは未来に起こり得ることから独立に、現在の意味を規定しようとする傾向がある、ということです」(『常識と非常識』より)

我々大人たちは、この氏の言わんとする真義をあらためて咀嚼し、この国の“文化“のあり方と今後の進み行きを真剣に考えるべき責任があると思う。