幕末、遷都を考えた人物

NHK大河ドラマを1年間真面目に見ることは稀だが、今年の『篤姫』は見ものだ。脚本がいい、。キャストが老若男女で多彩、それぞれ役づくりに創意工夫が見られる。
ただ、幕末・開国の時代に大きな影響力のあったはずの人物が目下のところ描かれていない。また、登場しているものの地味すぎないか。
佐久間象山の存在がない。大久保利通の存在感は・・?
幕末という時間のなかで、政治の中心が次第に京都に移ってゆくようだ。京都には天皇がいたからだ。
その天皇を京都から他所に移そうという、つまり遷都の構想を抱いていたのが、象山と大久保の両人だったという。
が、二人の遷都論は立場・時期とも異なっていた。象山は天皇彦根に移し、いずれ皇居を江戸へ移そうと考えていた。会薩同盟という公武合体派のクーデターが成功した翌年の1864年のことだった。一方、大久保は倒幕の最終的な詰めとして、大坂への遷都を考え、岩倉具視に建言したという。1867年のことだ。


それにしても、天皇彦根城に移し、幕兵をもってこれを守ろうとする象山の案は大胆で危険すぎた。尊王攘夷派が黙っていない。激しい恨みをかった。この策が実行されれば、玉を幕府に奪われることになるからだ。
≪参考:松本健一『開国のかたち』≫
加えて、彦根城の主はといえば、強権をもって開国を断行し、安政の大獄で攘夷派の志士を一掃した井伊大老である。