≪続≫王さん-哀しき惜別の胴上げ

ホームグランドでの最終戦も惨めな負けに終わった王ソフトバンク。試合終了後、王監督が全選手とコーチングスタッフなどを背に
球場のファンに、観衆にFarewell Speech。


惜別の挨拶というより退任の決意と感謝の気持ちがにじみ出る潔い、決然としたスピーチだった。見事というほかない。選手たちやファンの目に涙が溢れている。無理も無い。王さんの一言一言が胸に染み入るからだ。 
驚いたシーンがある。一軍、二軍の全選手と全スタッフ、そして球団関係者などすべての人に1人ずつ自ら丁寧に言葉をかけながら、握手してまわる。このような引退シーンは見たことがない。
ほとんどの者の目に涙が浮かんでいる。長く世話になった中心選手は号泣、咽び泣いている。


涙もろいはずの王さんの目に涙は見られない。彼にとってHappy Retirementだっただろうか?
『普段は涙もろいんだけどね。自分のことでは泣けない。損な性分ですよ』
損な性分どころではない。今期の不成績を「すべて監督の責任」だと言い切る王さん。絶対選手のせいにしない。厳しく自分を律し、一人ひとりに語りかける言葉を持つ類稀な人間性を見たとき、そのなかにボクは、どの世界にも通じる優れた社会人としての、そして組織のリーダーとしての風格を実感する。
王さんの胴上げの姿はいつみてもきれいだが、昨夜の胴上にはバンザイは見られない。寂しく惜別に満ちていた。