1枚の写真が招いた悲劇?-戦場カメラマンの悩み

米軍がイラク侵攻を開始して間もない2003年3月。戦闘に巻き込まれ負傷した4歳のイラクの子供を抱きかかえて走る米軍衛生兵の姿が世界に衝撃を与えた。その必死の表情の1枚の写真がこの衛生兵を時の人に押し上げた。兵士の名はJoseph Dwyer。撮影したフォトジャーナリストの名はWarren Zinn。マイアミの法科大学院在学中、四年半にわたり、アフガンとイラクの戦場に赴いたWarrenは、戦場におけるフォトジャーナリズムのあり方など真剣に考えたことはなかったと当時を振り返る。
そのWarrenのもとにメールが届いた。「君の一枚のショットで世界の目が注がれ、名をあげたJosephが肥満症のため周囲の悪評に耐えかねPTSDに苦しんだあげく先月28日に命を絶った」
Warrenにとって胸に突き刺さる知らせだった。計り知れない痛みを覚えた。PTSD(posttraumatic stress disorder)は「外傷後ストレス障害」である。いわゆるストレス障害(ASD)とは性格を異にし、突然の衝撃的出来事を経験することによって生じる、特徴的な精神障害だ。
いまなお、マイアミ州立大学のロースクールに在学するWarrenは自問する。
「あの一枚の写真がJosephを死に至らしめたのか?彼の自死とあの写真とどのような関係があるというのか? Josephはあの写真が彼にもたらした名声を憎悪していたとメディアは伝えるが、もし自分が彼に向けてシャッターを切らなかったならば、彼は同じ道を選ばなかったとでもいうのか。そのままイラクの戦場に駐留していたとでも・?」
戦場カメラマンの悩みは尽きない。戦場には人々の知られざる数々の苦悩と悲劇が置き去りにされている。
≪今朝届いたThe Washington Post紙/OUTLOOKを参照≫