政界用語“粛々(しゅくしゅく)と・・”にご用心

“粛々と・・”と云えば、「鞭声粛々夜河を渡る」(山陽詩鈔)が口をついて出る。この“粛々”、『静かにひっそりとしたさま』『静かに行動する様子』が本来の意味だが、政治家(特に為政者)や、何か物事を推し進めるようとする策士などが『粛々と審議をすすめる』とか『粛々と委員会で採決する』などと述べるときは要注意だ。
意味が変容し「反対意見に惑わされず(押し切って)自らの意図通りコトを決める」ことになるのが通例だ。
あれだけ中国政府の人権問題に神経を尖らせてきた米政権が、ここへきて対中関係をめぐり柔軟姿勢に転じている。北京五輪への姿勢がそうだ。89年の天安門事件以来、米国は対中武器輸出禁止制裁を行ってきたところ、米射撃チームが五輪に参加するという頭の痛い問題に直面。President Bushは上下両院に中国へ競技用の銃を持ち込むための特別措置の承認を求めることになった。
中国との貿易の拡大、スーダンミャンマー、人権問題など、米政権の中国へのアプローチは行き当たりばったりで矛盾に満ちている。五輪閉会式に出席予定のライス国務長官は語る。
「世界の困難な問題に対処するには良好な米中関係が不可欠」
ならば、あのG8洞爺湖サミットでの温室効果ガス削減に関する宣言はなんだったのか。中印等、新興国が異議を唱えることを承知の上で米国主導の声明を“粛々と”発表した。任期切れ間近のブッシュ政権の中国への視点は単純でご都合主義だ。その場しのぎの対中配慮だけでは、“良好な米中関係”の構築も“一寸先は闇”だろう。