“出家”は救いの文化?

源氏物語の時代」(山本淳子著)を読んでいる。当時の“出家”というものについて考えさせられた。
平安朝の都人には自殺という文化がなかったという。人生に絶望し、身も心も極限に追い込まれたときには出家する。その意味では出家は心の自殺であり、出家により俗界を捨てることで、政治を含む世事から自己を抹殺したのだと(著者は)いう。
suicide(自死)は時代のcultureなのか。だとすれば、近年増加するsuicideは今の時代の一種の文化なのか。世俗から逃れ仏門に入ることで、自らを救済し余生を送ることのできた者は、平安朝といえども都人に限られていたのではなかろうか。当時も陰湿な“イジメ”はあった。権力闘争に敗れた者は、武人でなくても失意のうちに自死を選んだケースもあったに違いない。都人など雲の上の存在だった地方の庶民の場合はどうだったろう。時代の文化は一部の特権階級・上流階級の者たちのみによって形成されるものではない。