米加先住民の同化政策の行方は

カナダの首相が、先住民に対する同化政策を謝罪したという。カナダは米国より古い西部開拓史をもっている。差別と闘う原住民復権運動も長い歴史がある。
英国系移住者は原住民に厳しかった。白人の原住民政策は一貫して「同化」であった。原住民に英語か仏語を教え、農耕その他の技能を授けた。さらに彼らをキリスト教に改宗させようともした。つまり、原住民の政治・経済・社会の組織と文化を全面的に否定し、白人が勝手に決めた型に原住民を押し込めようとしたしたのである。
今から30年前、いわゆるCanadian Indiansは30万人強、カナダ全人口の1.5%程度だったが、徐々に“負け犬”から誇り高い国民へと変わりつつある。カナダでは現在、先住民をインディアンと呼ばない。first nationsと呼ぶ。1970年代までの約100年間、先住民の子供たちを親から切り離し、教会運営の寄宿舎で強制・矯正教育を進めてきたカナダ政府が、その非を認め先住民に許しを請うた。
明らかにカナダ政府は、過去の先住民に対する迫害政策を贖罪し、負の遺産の解消に向け政策転換しつつある。
米国はどうか。「現在ではほとんどのインディアンがアメリカの政治・経済・社会活動を受け入れており、たとえば英語を話さない者は例外といっていいだろう。しかし、これをもってかれらがインディアンであることや部族に対するアイデンティティを失っているとみることは誤りである。・・・今日に至るまでインディアンはけっして単一民族ではなく、またアメリカ社会へ同化しながらもインディアンとしてのアイデンティティは保持し続けているのである」22年前の『アメリカ西部史』(中島健一著)からの引用である。
こんにち米国では、先住民を一般的にNative Americansと呼ぶ。さらに、民主党大統領候補Barack Obama氏はFirst Americansと呼称している。First Americansの中には英語しか話せない部族が少なくない。これを同化と呼ぶべきか。言葉の消滅は部族文化の消滅につながる。次期大統領候補はこの状況をどう見るか。First Americansの人口は年々減りつつあると聞く。Obama氏は“Americaは一国、United だ”というレトリックを駆使し、先住民たちを同化するつもりだろうか。