原住民と先住民

アメリカやカナダやNZに出かけると時々「日本には先住民はいるの?」と訊かれることがある。日本は単一民族国家(homegeneous=同質の者で構成されている)だと認識しての問いかけである。この質問に対してボクは「北部地方にNative Japaneseが住んでいる」と答えるが、人口や言語・宗教・生活様式などに話が及ぶと答えに詰まってしまう。それだけボクなどはアイヌの人たちについて無知だった。北海道にアイヌ語を源流とする地名があれほど多いことがわかっていながら。
『政府はアイヌの人々を先住民族として認める』ことを求める国会決議が衆参両院で採択された。「北海道的に言えば、昔からこの土地はアイヌ民族の土地だった」と北海道選出の現官房長官は語る。明治時代に独自の習俗を禁止され、“旧土人”と呼称された。22年前、当時の首相は「日本は単一民族国家」と発言、アイヌの人々をいわゆる“大和民族”から切り離そうとした。
今度の「アイヌ先住民族決議」は“権利確立の第一歩”だとアイヌの代表は喜びをかみ締めている。が、英字紙は先住民と言わず“indigenous people”(原住民)と表現。北海道に住むNative Japaneseとは言い切っていない。米国では今ではNative Americanと呼称している先住民を四半世紀前まではIndian(インデアン)と呼んでいた。独自のreservation(保護地区)を与えられている一方、固有の言語が徐々に廃れ、英語に同化されていく。言葉の消滅は民族の消滅である。Canadian Indianは、First Nationsと呼ばれ、同国政府は先住民文化の見直しと教育や雇用問題の振興策を進めている。AustraliaのAborigine(アボリジニ)の現状は今なお悲惨である。
New Zealandはどうだろう。中学・高校でMaori語やMaori文化の学習を義務付けし、最も先住民(Maori)との融和・共生が進んでいる模範的な多民族国家の1つだと言えようが、それでも先住民の雇用問題や教育・生活水準に悩みを抱えている。
近づく洞爺湖サミットが追い風になったと思われる今回の画期的な“国会決議”だが、アイヌの人たちが直面している難問を解決できるか。差別・貧困など悩みは深い。