PM Abeの再登板に隣国警戒も肯ける

「政治家や論客は威勢のよい言葉を並べて人々を煽るだけですむが、実際に傷つくのは現場に立たされた個々の人間なのだ」と村上春樹氏が東南アジアの領土を巡る問題について憂慮しA紙にエッセイを寄せていたが、再登板のPM Mr Abeのはしゃぎ振りは異様だ。

金融緩和を煽りたて、誰が名づけたかアベノミックスという称号を頂戴したと思ったら、経団連の御大からは大歓迎。挙句は、福島第一原発視察後、「原発ゼロ・脱原発見直し」を表明。ベストミックスなどという珍語で誤魔化すありさまだ。兜町証券取引所の年末大納会。あの上機嫌は異常だ。為替レートはUS$1=¥86を上回り、東証株が平均1万円を超えて御上はご満悦だろうが下々の者は好況感があるか。答えはノー。





これら全てメディアにヨイショされたLDP政権奪還へのご祝儀相場と云うべきだろう。

投票率史上最低の衆院選有権者はLDPを勝たせすぎた。メディアがひど過ぎる。国民の投票行動をあれほど誘導したケースがかつてあったか?大衆の愚民化も甚だしい。正常なジャーナリズムの風上にも置けない。まるで体制翼賛の出来勝負だ。


選挙民は、LDPに、中でも、right wingのA Cabinetに原発推進憲法改正などを白紙委任したわけではなかろう。
The NY Times Int'l Weekly最近号は社説で“Mr. Abe's Second Chance”と題して、Abe氏のPM再登板に警戒を強めている--
“He shamelessly denies the wartime sexual enslavement of Korean women by Japanese military forces. He says he will reinterpret Japan antiwar constitution to permit a more assertive foreign policy. And he favors revising Japan's school textbooks to further disguise Japan's militaristic excesses and promote more patriotic pride”(彼は日本軍による韓国人女性の従軍慰安婦扱いを否定して恥じない。更に、反戦平和の現行憲法の改正をもくろみ、専断的外交路線の道を開こうとしている。加えて、日本軍の不法・侵略行為をねじまげ、愛国心を鼓舞すべく学校教科書の書き換えを歓迎している)
“Mr Abe's attempts to rewrite Japan's wartime history understandably disturb neighboring nations, like China and South Korea, that bore the brunt of Japanese aggression”(Mr Abeの日本戦争史の書き換えの意図によって当然中韓など近隣諸国は心中穏やかでない。かつて日本軍による侵略の矢面に立たされたからだ) 
6前のPM Abeはどうだったか。“During Mr.Abe's first term, in 2006-7, he showed that he would moderate his stridency in the interests of easing tensions with China”とあるように、「中国との緊張緩和を図るべく、耳障りな言葉は控えめにした」
そのうえで、同紙社説は次のように締め括る--
“We hope he will do so again. Japan voted economic revival, not nationalist fantasies. As a nation that lives by trade, Japan needs harmonious relations with its main Asian trading partners, China most of all.”(姿勢を変えないでもらいたい。日本の有権者は経済再生を願って投票したのであって、ナショナリストの夢の再来を望んではいない。貿易立国としての日本は、アジアの主要輸出入国、中でも中国と友好関係が必要不可欠である)

今に始まったことではないが、日本記者クラブの永田町との密着ぶりが有力紙を読むに値しないものにdevaluateしているだけに、むしろ外国紙誌のニッポン政治に対する視点を見のがすべきではない。
鬼籍に入ってしまった吉田秀和氏や丸谷才一さんが存命ならなんとコメントするだろうか。原発事故に触れて、丸谷さんが嘆いていた−「あんな事故が生じる国を作ったのは問題だ。基本的人権言論の自由を生かせているのか疑わしい」−
この国はどこへ向かおうとしいるのか。脱原発の声が消えゆき、右に傾き、歴史観を見直し、自己愛のなかに引きこもってしまうのか。その先にあるのは孤立への道だ。