あっぱれイブシ銀 / 退屈なthe 634-meter tower

これほど沸きに沸いた国技館は何年振りのことだろう。千秋楽の優勝決定戦は最高潮に達した。37歳8ヶ月、史上最年長力士が初賜杯を抱いた。

平幕の旭天鵬、モンゴル力士の先駆者だ。早々と引退し祖国モンゴルで国会議員になった同期の“技のデパート”と言われた旭鷲山にさえ“兄貴”と慕われ、朝青龍にも一目置かれ、いま角界をリードする白鵬、白馬富士、鶴龍からも尊敬されている。


毎場所、目立つことなく白鵬の土俵入りには太刀もちを務め、コツコツと淡々と土俵に上がる。「いつまで現役を続けるの?」と言われても仕方ないイブシ銀のお相撲さんだ。これまで金星3個、敢闘賞6回。技能派ではないが、相撲の王道を歩んできた。先般停年で身を引いた大島親方の薫陶を受けた。


親方は元大関旭国、小兵で【相撲博士】といわれたプロ中のプロだ。親方がいなくなったため大島部屋が消滅、友綱部屋に転籍したが、「稽古相手が増えてよかった」とテンホー。こないだ引退した名大関も「毎日一番遅くまで稽古場に残っている」と感心すること頻りだ。

場所前、誰がテンホーの優勝を予想しただろう。栃皇山を破って花道を引き上げるテンホーが涙に咽んでいた。部屋の弟弟子たちが大泣きしていた。ボクも思わずももらい泣きだ。


優勝パレードの旗手を務める白鵬「自分の優勝の時より嬉しい」--正直な気持だろう。

苦節20年、日本の国籍も取得した。いずれは立派な親方になるだろう。だらしない大関陣を尻目に、苦労人が大輪の花を咲かせてくれた。体は若い。あと5年ぐらい現役を続けて欲しいものだ。

国技館を見下ろしていた押上のTokyo Skytreeが今日22日正式開業する。
634-meter、電波塔としては世界一の高さだというが、あまり興味ない。『こういうものがある町を誇りに思う』と地元の教師が言っていたが馬鹿じゃないの? ただ高いだけだ。

高度経済成長の象徴というべき1953年完成のThe Tokyo Towerの時代とワケが違う。いま国難の日本もTokyoだけは別格か。3/11以降変わってしまった時代の風景と違和感を感じる。<集合的無意識>を地でいく実に退屈な光景だ。

「高さ競争は後進国のやることではないですか。もっと大人になってもらいたいですね。どんな高い塔も今に抜かれます」と作家のSさん。