“あれから40年”---the agedに人気のpoison-tongued comedy

日本はユニクロポケモンなどの海外進出にみれるように、世界の若者の文化センターの地位を確立してきているが、高齢化社会の急速な進行も世界ナンバーワンだ。年々増える現役を退いた60代・70代、中でもたそがれ歳のご婦人が目立つ。
“Forty years ago, when you first married, your husband swept you up in his arms and carried you into the bedroom.”(40年前の新婚時代、ご主人の腕に抱かれて寝室へ)
自称<中高年のアイドル>、A.Kさんのステージ・ショーの始まりだ。

“When was the last time that happened?”(昨日のことのようだけど、いつ頃のことでした?)
会場のご婦人たちを指差しA.Kさん。“あなた1962年? あなた60年? あなた56年? そこのあなた、1910年ですか?”
“Now it is you who takes him by the hand into the bedroom. And what for? To change his adult diapers!”(それが今では、あなたがご主人の手を引いて寝室へじゃありませんか。何故なの? ご主人のオムツの取っ換えですって!)会場は笑いの渦と拍手が止まない。
お客の大半は還暦や古稀を超えたご婦人たち。世間の甘いも酸いも知り尽くした人たちだ。滅多なことでは笑わない渋面に笑いがはじける。
神戸でのステージを観た63歳の主婦は「A.Kさんは高齢化社会のお笑い芸人。私たちと同じ世代だから、私たちの抱えている悩みや問題をよく知っている」と。
自らの芸風を“poison-tongued comedy”とか“dark humor”と呼ぶ。一種の毒舌・ブラックユーモアだ。お年寄りが心に抱く痛みや悩みや不安感を素っ気なく暴き出す。

「皆さんはご自分の不安を衝かれるからお笑いになる」とA.Kさん。「皆さんに私的ではなくお客様として語りかけ、老いの悩みを癒しているわけです」
「もっといい男だったら、役者になったでしょう」と真顔でひと言。彼のルックスとポニーテールの風采をみて客席はドッと沸く。
「奥様、お若いころはいかがでした? ご亭主がお仕事からお帰りになるのを待ち焦がれる毎日だったでしょう。あれから40年、ご主人は今じゃ定年退職、お家でゴロゴロ、奥様いま何をお考えですか?いつになったらも一度勤めに出ていくかしら。ただそれだけしょう」
お客の1人、68歳の女性に言わせれば「随分ヒドイ話しを聴かせてくれるけど腹が立たない。ホントのことだから」

連れのご婦人(66歳)のコメントがいい---
“I like him because he also reminds us about what we still have. Sometimes I get tired of my husband. But when I come here, I realize I am lucky to have him.”(わたし、彼のフアンなの。私たちに郷愁を搔き立ててくれるから。確かに時には主人の存在にウンザリすることもあるけれど、彼のショーを聴きに来ると主人と一緒になって幸せだと実感させれるます」「A.Kさんに感謝してます。主人と共有した日々と置き忘れていた時を思い出させてくれるから」
そして「たぶんあの妙味が高齢者を笑わせる秘訣じゃないかしら」と付け加えた。


The NY Times東京支局長Martin Fackler氏の取材記事“Comedian Cashes In On Aging”(高齢者に大うけのお笑い芸人)を参考にした。