塩屋岬の灯台に光が蘇ったが・・・

昭和最後の年、88年4月11日、Tokyo Domeのこけら落とし。不死鳥公演の特設ステージの美空ひばりの立ち姿は荘厳だった。

名曲となった星野・船村コンビによる『みだれ髪』の一番目最後のビブラートが途中で途切れ聴くに堪えなかった。
ひばりにしては珍しい。まさに最晩年を思わせた。

「塩屋の岬」を唄ったひばりは、この『みだれ髪』の三番の最後の一節を最も好んだという。
 見えぬ心を照らしおくれ 独りぼっちにしないでおくれ

ひばりが光を託した塩屋岬灯台に11月30日ようやく灯火が戻った。3/11大震災で壊れ、仮の投光器で細々と海を照らしてきた灯台の8ヶ月20日振りの復活である。19世紀末に点灯した灯台は太平洋戦争時、米軍機の攻撃で破壊されたが復元、荒海を往来する人たちを見守ってきた。

灯台に通じるいわき市平豊間の海岸線を車が走る。防潮堤が跡形も無く崩壊し、岩のようなコンクリートブロックがあちこちに転がる。4月初めの無残な情景がYou Tubeに映った。

灯台を眺めながら塩屋岬の砂浜を歩き歌詞を練った星野哲朗さんも逝ってしまった。ひばりちゃんの寂しげな笑顔と歌碑が悲しさをを募らせる。

木下恵介監督の名画『喜びも悲しみも幾年月』が懐旧を誘う。灯台は3/11に押し寄せた凶暴な津波を恨むことなく黙して荒海を照らす。