落語界にもvisionary

昨年落語協会の会長に就任した小三治師匠の動向を注目していたが、大胆な改革を進めようとしている。

若手の真打への昇進だ。抜擢と言った方が正しいかもしれない。落語協会はここ数年、春秋に数人ずつ昇進する年功序列主義が続いていた。「人事の停滞を避け、披露興行などでの1人1人の経済的負担を軽くする配慮からだとされる」(A紙)
道理で、“これで真打なの?”と首を傾げたくなるような禄でもない芸?をトリの1つ前あたりでご披露なさる噺家もいる。面白くも可笑しくもない。客の笑いもお世辞笑いに聞こえる。
小三治会長が脱・年功序列主義を打ち出した。自らこまめに二つ目の勉強会などに足を運び審査・判断を下す。実力主義でいこうとする小三治さんの方針の表れだ。

その結果、来春、春風亭一之輔さんが真打に昇進することになった。まだ33歳、異例の21人抜きだ。来秋には古今亭朝太と菊六の両名が真打昇進する。2人とも30代半ばだ。
一之輔さんは今や人気の二つ目さんだ。当人は、「何人抜きということで注目されるのはイヤです。真打は落語家生活のスタートであってゴールじゃない。むしろこれからが大事」と淡々としたものだ。

根っからの落語好きだ。稽古でつらいと思ったことはないと云う。「むしろ高座で稽古している感じ。それが無性に楽しい。相手が笑ってくれた時の快感ったら、ないです」つまり当人は高座で至高体験を味わっているわけだ。

小三治師匠はさしずめ落語界のvisionaryと云うべきだろう。ITビジネス界と世界は違うが『先進的・独創的なビジョンを現実化』し、大衆文化に大きな貢献をしてくれるに違いない。一之輔さんも後に続いて欲しいものだ。
我が国、学校教育界にvisionaryが出現するのは不可能に近い。