我がColumbo---アテレコ・アフレコ名人がいてPeter Falkがいた

Peter Falkが逝った。LA市警殺人課の敏腕刑事を温かく演じて、長く人気を博した。ボサボサ頭でヨレヨレのレインコートが良く似合った。『車にレインにコート−にわたしのこのツラ、これだけそろってりゃと十分だ』と自伝で云っている。

現代旧シリーズ“Columbo”は1972年からTVに登場した。字幕なし吹き替えモノだ。邦題『刑事コロンボ』。日本語版はアテレコの名手、額田やえ子の手になるものだった。


邦題は単純で平凡だが、あの名セリフ?「ウチのカミサンが..」がコロンボの名刺代わりになった。声は小池朝雄さん。Peter Falkと小池さんが一体化して出来上がった名品だ。

Columboが追い詰めてゆく犯人にハリウッドの大物が起用されたが、日本語版もそうそうたる声優や役者揃いだった。若山弦蔵森山周一郎金内吉男野沢那智佐野浅夫北村和夫、高橋昌也、田中明夫など並みいる方たちが続々登場、そして岸田今日子さんまで....。
何度か、吹き替えなしのナマのColumboを観たがいささかがっかり。可笑しなことに、Peter Falkの声は小池さんには及ばなかった。
あのシブイ低音の小池さんは26年前に没している。54歳の若さだった。ボクたちにとって小池朝雄さん無しにColumboは存在しなかった。

60年代、視聴率を上げたBurk's Lawがそうだ。邦題『バークにまかせろ』。タイトルが泣かせる。Gene Barry演じるBurkの声は若山弦蔵さん。日本語版台本は『ジャッカルの目』の篠原慎氏によるもだったと思う。

アフレコものは怖い。ヘタをすると原作を台無しにしてしまう。その点、Columboの吹き替えモノはオリジナルに磨きをかけた稀有な映画だ。とは言え、そこにはやはりPeter Falkの存在があったからだ。右が義眼のシブイ名優だった。確かに“よれよれのコートの陰から、米国上流社会を覗き見る楽しみ”を与えてくれた。これも、俳優Peter Falkの憎めない個性ががあったからだろう。

私事に及ぶが、現役勤めの頃の早春や初冬、着古したコートをひっかけ朝出勤するボクの後ろ姿を見て、“ウチのカミさん”が「コロンボみたいだわ」と笑ったものだ。ボクは悪い気などしない。「格好いいだろう。ボロンコだ』と急ぎ足でバス停に向かったものだ。