古老を飲み込むGodzilla Tsunami

青森、岩手、宮城の三県にわたる三陸沖大津波が明治〜昭和に3回起きている。
吉村昭氏の『三陸海岸津波』を読んだ。大津波に遭遇した人たちの生々しい証言と記録に震撼させられる。

明治の大津波が来たのが旧暦端午の節句昭和8年の大津波は3月3日桃の節句。ともに子供のお祝いの日であるのがやるせない。多くの子供が亡くなった。
昭和の大津波で生き残った子供たちが体験談を作文に残している。身を切るようにして綴られた貴重な「記録」だ。
 「私は、私のおとうさんもたしかに死んだだろうと思いますと、なみだが
  出てまいりました。
  下へおりていって死んだ人を見ましたら、私のお友だちでした。
  私は、その人に手をかけて、
  『きみさん』
  と声をかけますと、口から、あわが出てきました」
中学時代によく円谷監督の『ゴジラ』を映画館で観たが、アニメ制作者T氏も云うとおり、ゴジラGodzilla)は津波のようなものだ。

「....ゴジラが海から立ち上がるとき、海面も山のように立ち上がる。水の山脈は沿岸の町を呑み込んでしまう。ゴジラは海の底で眠り、海の底からやって来る。まるで三陸沖で海底地震を頻発させるマグマのようではないか」とT氏。

明治29年の大津波以来、昭和43年の十勝沖津波にいたるまで何度も津波を経験した岩手県の古老、Hさんが言っていた。
 「津波は、時世が変わってもなくならない。必ず今後も襲ってくる。しかし、今の人たちは色々な方法で十分警戒しているから、死ぬ人はめったにないと思う」
3/11大地震の大津波はHさんの願いも空しく≪今の人たち≫をたくさん呑み込んでしまった。Tsunami Godzillaが古老を呑みこんだ。