本読みに誘う読書家だった

NHKBS2で長年愛聴してきた「ブックレビュー」が最近遠のいていくような気がする。2月頃から児玉さんの姿を見なくなったからだ。昨暮あたりから、痩せが目立ち気になっていた。それにしてもあっと言う間に逝ってしまわれたものだ。

「ブックレビュー」の最後は林望さんとの『謹訳 源氏物語』を巡っての対談だったと思う。実に楽しい対談だった。隣の守本アナもよかった。

児玉さんはブック紹介の出演やインタビュー相手を引き立たせる。アシスト役の女優やアナウンサーをさりげなく励ます。そして、いつの間にか中江さんみたいにチーフ・インタビュアーに仕上げる力を持った稀有の人だった。
出演者や特別ゲストより読書好きで内容理解も的を射ていた。英・独語、さらには仏語も堪能だったようだ。博学な俳優、まさにHearts and Mindsを見事に兼ね備えていた。多くの人が児玉さんを格好イイと評する。
謙虚でインテリぶらないところがいい。華があっていい。シブイところがいい。長女の方が30代半ばで早世している。子供に早く逝かれた人にかける言葉をボクは知らない。ただ無念で悲痛だ。
ボクの“敬愛”する藤沢周平さんの作品も児玉さんの愛読書の1つだったようだ。4年前、2007年2月の放送番組「おはよう日本」のなかで、周平さんを絶賛している----
「同じ作品でも読む年代ごとに解釈が違う。ミステリー、耐え忍ぶこと、自然描写がよいスパイ小説的要素あり、エンターテインメント、いろんなものが詰まって楽しく読ませてくれる、それでいて説教くさくない、今の日本にないもが詰まっている。そして生きていく知恵がある.....」

周平さん、あの世で児玉さんに会ったらなんて言うかしら。たぶん、長髪を撫でながら「ちょっと褒めすぎですよ」.....
また1人惜しい人が呆気なく逝ってしまった。