turn outward とturn inwardのミスマッチ--受難の就職状況

今春大卒予定者の12月末までの就職内定率68.8%は3年前の81.6%に比して約3%減。近年最悪の数字だ。
その理由は、雇用市場の潮流に逆行して海外志向の若者が著しく少なくなってしているからだ。

我が国主要企業経営者が海外進出をめざしているにもかかわらず、海外で学ぼうとする若者が減少傾向にある。悪循環だ。大学側や政府関係者も海外留学に興味薄の学生達について頭を抱えいてる。文科省や大学は現在の社会のニーズに応えらるよう国際感覚を身につけるべく海外留学を強く促しているのだが一向に効き目がない。

都内有力私大の臨床教育のエクスパートON先生によれば「2、3年前までは、自分の担当している4年生のセミナー履修者20人のなかに6〜7人の海外研修経験者がいたものだが、現在17人のセミナー受講者のうち海外留学や海外研修経験者はゼロ」とのこと。要因は何か。ON教授は「日本の若者は益々引っ込み思案でリスクを避ける傾向が強まり、新たなチャレンジを嫌がり、その覚悟もない」と分析。そのうえで「海外留学への関心の欠如は、未知の世界に対する不安感の増幅が原因だ」「彼らは心理的にも弱く虚弱で、人間としての基本的な生存本能さえ欠けている」と厳しいコメントを寄せている。

都内名門私大への香港からの留学生HK君(2年生)に言わせれば「僕たち香港からの留学生に比べて日本の大学生は一般的にエネルギーと意欲が乏しい」「日本の学生にとっては、一流大学に入ることが目標になっているようだ。目標が達成されるととたんに学習意欲が落ちてしまうのではないだろうか」「大学受験は難しいが、合格し入学すれば容易に卒業できるからか・・」

昔の職安関係者は日本の大学生は相変わらず大企業就職による安定志向が強いが、最近になり企業側は国際感覚と才能のある人材を求め始めた。「入社して社員を海外研修に派遣するほどの時間的ゆとりはない」というわけだ。
これは大学生に海外進出に対応できるだけの素養を求めている現われだ。雇用を巡る求人側と求職側のミスマッチは続くだろう。その間に企業は益々海外進出に乗り出していく。来年新採用者の8割を非日本人で賄う名のある電気・運送・衣料会社などが続々現われている。

反面、日本の大学生は益々“inward looking”(内向き)になりつつある。
求人側はよい機会があれば海外のどの国に派遣されても喜んで就業する意思をもった人材に関心を寄せている。
“That's different from Japanese employees, who may favor working at home.”(国内での就職を望む日本人求職者とのギャップは埋まりそうもない)。曰く“ジャパン・シンドローム”。

かかるmismatchがなくならない限り危機的状況にある超就職氷河期は溶解しないだろう。