Tucson Tragedyの衝撃(終章)

犠牲者6人、その中には連邦判事や9歳の少女が含まれている。負傷者13名、頭を狙い撃ちされたGiffords下院議員は重態に陥った。この狙撃犯の凶行から1週間が過ぎた昨日土曜日、現地Tucsonのthe Safewayスーパーマットでは予定通り銃の見本市が開かれている。

多くの客が訪れ、犠牲者を悼み1分間の黙祷を捧げ会場に足を運んだ。
スーパーマーケットで「普段どおりの生活を取り戻す必要があると思ってやって来ました」と56歳の婦人が語っている。
「人を殺すは銃のせいではない。人が人を殺すのだ」
メンタル・ヘルス関連の仕事をしていた58歳の紳士のセリフだ。銃保持規制反対派の常套語だが、土曜日一番に銃フェアーにやって来て開場を待っていた同氏も銃乱射に対するメンタル・ヘルス・システムのずさんさを批難していた。

当日の銃フェアーにはいつもと違った風景が見られた。会場入り口に“Tragedy in Tucson”victims fund(ツーソンの悲劇による犠牲者追悼基金)と標記された募金箱が置かれていた。主催団体は全国ライフル協会、その傍らに星条旗が半旗で掲げられていた。
12日の現地Tucsonに於ける追悼集会でのPresident Obamaの30分以上に及ぶAddressを再度ビデオで見た。大統領は銃保持規制の必要性には言及しなかった。スピーチというよりむしろ掛け替えのない人たちに対する告別のTribute(弔辞)を思わるものがあった。

Obama氏は国民に呼びかけた。“....expand our moral imaginations, to listen to each other more carefully, to sharpen our instincts for empathy, and remind ourselves of all ways our hopes and dreams are bound together”(互いに想像力を高め、他者の言葉により注意深く耳を傾け、人に共感する本能を練磨し、我々の希望と夢を結びつけるあらゆる方法を我ら自身が想起しよう)

この呼びかけにをPaul Krugman氏は、我が国民の和解と融和の願望を述べた言葉として称賛しながらも、米国政治には「二都物語」ならぬ、“A tale of two moralities”(二つの道徳物語)が厳然と存在するとして、Obama氏の願いの実現の道程の難しさを指摘している。それは、何時果てるとも知れぬ人口中絶是非論議に似たものがあるという。Krugman氏はコラムの結びで“We all want reconciliation, but the road to that goal begins with an agreement that our differences will be settled by the rule of law”(我々は誰もが国民融和と和解を希求している。が、この目的達成の道は、相互の違いは法の定めによって解決すべきとする合意によって始まる)と述べている。
Tucson Tragedyに直面したBarack Obamaの言葉を聴き、The NY TimesのコラムニストGail Collins女史は“Obama brings it home”「(しみじみと語りかけた)オバマの言葉は身をつまされるものがあった)と論評している。

Obama氏はオバマ・マジックといわれる言葉を本当に必要とされるなときに隠してきたものだ。
大統領就任後この2年間、Obama氏は政治・政策面を推進するため声を大にしてbig speechesを連発したが、musicとpassionに欠けていた。それ比してTucsonでのAddressは際立って“力強いもの”だった。
Ms Collinsは中でも次の一節を特筆している。
“Our hearts are broken, and yet our hearts also have reason for fullness”(我々の心は打ちひしがれた。それでもなお我々の心には何故か満たされた道理がある)

Obama氏が警鐘を鳴らしている。“what we can't do is use this tragedy as one more occasion to turn on one another.”(我々は、今回の悲劇が復讐を招き泥仕合のきっかけとならぬよう、厳に慎まなければならない)
我が拙訳だが、Ms Collinsはこの一文こそObama's Address on Tucson Tragedyのなかのベストだと特記し、その上で“In his honor, I am not saying a word about Sarah Palin's video”(オバマ氏に敬意を表すして申し上げたい。サラ・ペイリンのビデオ・スピーチの中から拾う言葉は見当たらない)と付け加えている。