austerity(緊縮)するもshrink(萎縮)する勿れ

一本の棒が貫き、昨年(こぞ)が暮れ今年が明けた。

朝晴天、昼間から冬曇の情景の元旦だ。
昨暮、12月20日、Merriam Webster Dictionary Onlineが昨年最も検索されたwords Top 10を発表した。毎年恒例となっている。
そのトップは、意外な感じもするが、“austerity”-- 意味はstrict economy=「緊縮財政」だった。


特にEU圏における負債・通貨危機の時に検索されたが、1年を通じて最もメディアに登場した言葉だという。
20年間に亘りThe NY Times記者を務めてきたRichard Halloran准教授が我が国の将来について警鐘を鳴らしている。weekly column“The Rising East”で知られている同氏。米国とアジアの関係、特に安全保障問題に造詣が深く、“Japan: Images and Realities”を著し、日本通でもある。

「日本は引退したばかりの体重500ポンドの相撲取りのようだ。これからさらに長生きしたければ、脂肪分を削ぎ落としてスリムになる必要がある」
15年ほど前の世紀末の同氏のコラム「世界から消える日本」の一部だ。いささか旧いが現在の日本の現状にも通じる。どうも我が国はバブル時代に身にしみついてしまった贅肉を今なお引き摺っているようだ。

昨年惜しまれて他界した立松和平さんがポツンと呟いた。
『少欲知足』(「欲を少なくして足ることを知る」が大事にされるべし)。

仏教の教えを思い出した。『仏遺教経』(お釈迦様の臨終の際の最後の教え)にも、「知足の人は地上に臥すと雖(いえど)も、なお安楽なりとす。不知足(足るを知らぬ)の者は、天堂に処すと雖も亦意(またこころ)に称(かな)わず。不知足の者、富めりと雖も而も貧し」とある。


身近?なところでは藤沢周平さんの独り言『周平独言』には覚醒させられる--「私は所有する物は少なければ少ないほどいいと考えているのである。物をふやさず、むしろ少しずつ減らし、生きている痕跡をだんだん消しながら、やがてふっと消えるように生涯を終えることが出来たらしあわせだろうと時どき夢想する」
21世紀を目にする事ことなく、97年に鬼籍入ってしまった周平さんの最期はご自身の“夢想”どうりであっただろうか。消えたあと、次々と貴重な未発表の短編などが発見され、鶴岡市には記念館がオープンした。周平さんにしてみれば不本意かも知れないが・・。
ボクは周平さんの夢想と裏腹の現状だ。紙のモノがたまって困っている。
周平さんは遺すべきものを遺してくれた。否、もっと遺しておいて欲しかった。
夕刻の柴のHannahの散歩初め。夕闇の公園の細道には人通りは少なかった。

暮色が憂色に変わらぬ年であって欲しい。