full nest症候群から“孤族”へ?

もう5年ほど前になるが、2006年2月5日付A紙一面のヘッドライン『分裂にっぽん 中流層はどこへ』は衝撃的だった。
その第一弾、同紙特別取材班がまず焦点を当てたのがボクのオフィスの所在地、東京・高島平だったからだ。サブタイトルは“「みんな中流」崩れた“。以後、2007年4月28日まで随時連載されシリーズものとなって広く読者に読まれ、その後加筆、単行本として書店に並んだ。

高島平団地特集の小見出しは≪「仮の宿」39歳、定職なし≫≪母みとり、古稀過ぎ去り≫≪不採用50社、団塊もがく≫≪障害ある子、心配募る母≫≪その日暮らし、若者漂流≫と続く。どれも侘しいフレーズだった。
そのA紙の本日朝刊一面トップに≪孤族≫なる新語が登場した。造語であって欲しいが、冒頭のコラム『孤族の国の私たち』を読み、身につまされた。

父親・母親、子供2人の「標準世帯」からたった1人の世帯が急増。「『普通の家族』という表現が、成り立たない時代に私たちは生きている」「単身世帯の急増と同時に、日本は超高齢化と多死の時代を迎える」「個を求め、孤に向き合う。そんな私たちのことを『孤族』と呼びたい。家族から、『孤族』へ、新しい生き方と社会の仕組みを求めてさまよう、この国。『孤族』の時代が始まる」と特別取材班?はプロローグで述べている。
先日ボクはこのブログで『親の巣に戻るYoung Adults』に触れた。

成人となった若者が親の元に戻ってくる現象“Full Nest Synsrome”(フルネスト症候群)は“漂流する若者”の別の形態だ。こうしたYoung Adults、別称 Adult Childrenの寄る辺となっているnestには高齢化してゆく父母。
川柳“居候、三杯目にはそっと出し”などと笑っていられない。

boomerangersやfull nest族の成れの果てが『孤族』ではなかろうか。
今の社会、ほんとうに自立を阻む社会なのか? 世の中の仕組みが悪いのか。政治が悪いのか。いつの世にもそんなに善政など期待できない。
若者が内向きになり過ぎていないか。他力本願になっていないか。団塊ジュニアや次の世代の若者が、敗戦後の日本人が築いてきた遺産を食いつぶし、過去の延長線上で生きようとする。いささか虫が良過ぎる。甘すぎる。
ボクに言わせれば、造語だが≪創個≫≪創自≫(creating your own=self-creating)が必要だ。
因みに、Snoopyが“Secrets of Life”(成功する人生の秘訣)を説いている。“Always look ahead. Also, look back over your shoulder”(将来に対して前向きになること。同時に慎重であれ)

常套的な訓話に聞こえるかも知れぬが、換言すれば≪意志的楽観主義≫とでも呼ぼうか・・。