Bush-tax billの延長で辛酸、“Don's Ask, Don't Tell”撤廃に完勝?--Obama氏

本日早朝、President Obamaから久々にe-mailが届いた。タイトルは“The right to do”--「為すべき正しいこと」つまり「正義=Justice」を意味する。


“Moments ago, the Senate voted to end 'Don't Ask, Don't Tell”(ほんの一刻前、上院が“Don't Ask, Don't Tell”撤廃を議決)

“The fight for civil rights, a struggle that continues, will no longer include this one”(市民の権利確保の数々の闘いは今後も続く。が、この政策はもはや排除される)
“I know this repeal is a crucial step for civil rights, and that it strengthens our military and national security. I know it is the right to do.”(この撤廃が国民の権利を推進する極めて重要な第一歩であり、我が軍と国家の安全保障を強化するものであることは確かだ。依って、正しい選択だったわけだ)。

“Don't Ask, Don't Tell”--「訊かれない限り告白しない」という意味で一般的に用いられるが、米軍内で1994年で採用された同性愛者に対する政策をいう。軍当局は兵士が同性愛者であるかどうか問いただしてはならず、同性愛者の兵士も公言しないかぎり解雇されないというもので、一見さしたる問題もなさそうな政策だが、実態は異なる。同性愛者だと判明すれば強制除隊。権差別政策である。
94以来14年間米軍兵士間に亀裂を招いてきたこの政策が上院で65対31の大差で撤廃を決議した直後、President Obamaは声明を発表した--

“The Senate has taken a historic step toward ending a policy that undermines our national security while violating the very ideals that our brave men and women in uniform risk their lives to defend”(勇敢な我らの男女兵士が軍服をまとい、国家の防衛に生命を賭せんとする崇高な理念そのものを踏みにじり、我が国の安全保障を危くする政策に、上院は終止符を打つ歴史的快挙を成し遂げた)と謳いあげ、“By ending 'Don't Ask, Don't Tell', no longer will our nation be denied the service of thousands of patriotic Americans forced to leave the military, despite years of exemplary performance, because they happen to be gay. And no longer will many thousands more be asked to live a lie in order to serve the country to love.”(Don' Ask, Don't Tell政策にピリオドを打つことによって、長年に亘る模範的な従軍歴を有するにもかかわらず、たまたま同性愛者であるという理由だけによって、何千人もの愛国者の従軍を拒み除隊を強いるが如き米国はもはや存在しなくなるだろう)と宣言した。

当政策をめぐる今回の上院での与党DCの大差の勝利には、同党の重鎮Harry ReidやNancy Pelocy下院議長などの強力な後押しのほか、無所属のJ.I.Libermanに加えて8名のGOP議員がObama氏の提案に賛成票を投じた背景がある。
Barack Obama氏にとって、年内通過に執念を燃やしていた“Repealing 'Don's Ask, Don't Tell' policy ”は完勝と言えよう。

他方、問題のBush-tax billについてはObama氏はGOPに兜を脱いだ格好だ。Bush前政権の実施した所得税や配当税などの期限付き減税の2年間延長を柱とする景気対策の減税延長法案にPresident Obamaが署名、成立した。上院での投票結果は81票対19票、Obama側DCとGOPが互いに歩み寄り成立した法案だとの見方があるが、実情はそうではない。富裕者層も対象とするthe Bush-era lowered tax rates(ブッシュ政権による減税)を撤廃せんとするDCの年来の努力は潰された。

Obama氏は上院が決議した法案について、両党間の交渉が極めて難航したことを認め、“It includes some provisions that I oppose”(法案のなかには私の意に反する条項が含まれている)と付け加えながらも、「米国の一般家庭や産業界にとってまた景気回復にとって実質的な勝利である」と称賛している。

DCの議員の意見は分れている。「低迷する景気に対する短期的な刺戟策となる一方、失業者だけではなくアメリカ中間層を救済するため議会は重要な歩み寄りを行なった」と評価する議員もいる反面、「Bush政権の減税策を今月末で全て失効させるべき我々の責任を保持できなかったばかりか、全国民に増税を強いることになる」と強く反撥する議員も少なくない。

今年末で期限切れになる富裕層減税を廃止する方針だったはずのDCだが、the midterm electionでの大敗が響いた。今回のObama氏のGOPへの譲歩に対しNancy Pelocy女史などリベラル派の有力議員の反撥は必死だ。

年が明ければ下院は完全にGOPの支配下に置かれる。わが国のネジレ国会どころではない。Obama氏は指導性を少し発揮し、評価が高まりつつあるものの、内政に限らずSTARTの批准や地球温暖対策など世界に多大の影響を及ぼす難問に直面している。同氏の前に立ちはだかるGOPは難攻不落か? 棘の道を切り拓てこそ2012年the 2nd termに向けて展望が開ける・・?